甲子園は高校球児にとって聖地である。そこでの活躍、または失敗は歴史以上に本人の中に残る。メディアで報道されない多くの背景。試合の数だけドラマがあって、選手の数だけ思い出があって、チームの数だけ重みがある。ただの試合のレビューではない。その試合に出場した選手の話が聞けるので、違った角度から読むことが出来る。やっぱり甲子園は最高だ。

１．〜神秘〜奇跡の24イニング
　　“ハンカチ王子”斎藤佑樹の夏　クライマックス
２．〜衝撃〜もう一つのノーヒットノーラン
　　“平成の怪物”松坂大輔に最後に立ち向かった男たち
３．〜波乱〜運を支配できなかった最強チーム
　　桑田真澄＆清原和博“ＫＫコンビ”夏ただ一度の敗北
４．〜流転〜世代交代　−“アイドル”荒木大輔から“金太郎”水野雄仁へ
　　金属バットに人生を変えられた男たち
５．〜気骨〜高度経済成長の申し子
　　元祖甲子園のヒーロー　原辰徳と東海大相模の血脈
６．〜プライド〜伝説のバックホーム
　　最後の公立高決戦−10年後の邂逅
７．〜好敵手〜“怪童”尾崎行雄と“万能”柴田勲
　　甲子園で三たび相まみえた宿敵
８．〜葛藤〜粉砕された未完のスター軍団
　　関西二大王者の激突　勝負の先にあったもの
９．〜運命〜蘇った決勝引き分け再試合
　　太田幸司と三沢高校を生み、育てた人と街

この目次内容でわかるとおり、ハンカチ王子までの甲子園名勝負を題材に、
その前後や裏側にまでしっかりとスポットをあてた良著です。

８．では今江（ロッテ）、朝井（楽天）、桜井（阪神）を擁するＰＬ学園と智弁和歌山の試合、
そして秋季大会でそのＰＬを破った岩田（阪神）、中村（西武）、西岡（ロッテ）を擁する
大阪桐蔭のことが書かれていますが、今年ブレイクした桜井も当時のこのメンバーでは
控えだったことがわかり、あらためてこの時期の大阪が激戦区だったことを思い知らされます。

個人的には６．の伝説のバックホームの松山商業の矢野選手の話が最も印象に残りました。

人物や背景がかなりしっかりと描かれている上、現在プロで活躍している選手が多いので、
今の時期とても楽しめる内容になっています。