いやあ、藤沢周平ですねえ
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全10編からなる短編集です。文庫本のオビに「抗いきれない運命に翻弄されながらも江戸の町に懸命に生きる人々」と紹介があるのですが、まさに、言いえて妙かと思います。
後期の作品に比べ、どちらかといえば、暗いストーリーのものが多いのですが、それでも、読んでいる私達が、けなげに生きていこうと思わせるプロットになっているのは、藤沢周平ならではといえるでしょうか。
また、1編1編が短いせいもあるのでしょうが、小説の最後を読者の推測に任せるものも多く、自分なりの結末にして楽しめるのも特徴でしょうか。
何れにせよ、初の藤沢作品として読むのは重い気がしますが、いつかは、読んで頂きたい藤沢作品です。
作者の「凄み」を感じます。
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個人的に、藤沢周平の長編で最も素晴らしいと思うのは「蝉しぐれ」だが、短編集としては、これが一番好き。
「運の尽き」など一部を除いては、娯楽作品とはいい難い、やや暗いトーンで統一された作品集だが、人間の業というか、男女の奥深い機微のようなものを、まったく無駄の無い構成で、さらりと書いている。
このような重いテーマを、決して重厚ではないタッチで簡潔にまとめ上げているのは、やはりこの作者の持つ、「一見温厚そうな外見に隠された、ある種の凄み」のようなものに因るのだろうと感じます。
藤沢作品の中で一番好きな作品
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タイトルになっている「驟り雨 」は藤沢作品の特徴をよくあらわしていると思います。やりきれない現実の中に一筋の救いがある。われわれは、主人公がこの糸ほどもはかない救いを掴み取ることを期待し、その実現に安堵します。すべてがこの作品にに凝縮されているといってもよいでしょう。いろんな藤沢作品を読みましたが、これほど緻密に出来上がった作品はほかにありません。「三屋清左衛門残日録」、「よろずや平四郎活人剣」、「用心棒日月抄 」のシリーズ、どれも話が軽快で人情味がある読み応えのある作品ですが、只一つ好きな作品をといわれれば、この作品を選びます。
全10編全て「まったくもー!」と怒って見ても・・ほろリ!
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江戸の町で、懸命に生きる裏店の人々を深く描く全10編
■「贈り物」
まったくしょうがない!いい人過ぎちゃって・・・・そこまでしなくとも・・
■「うしろ姿」
まったく、しょうがない旦那だ! しかし、憎めない。弱い人には優しくしないとね!
■「ちきしょう!」
あー、確かに「ちきしょう!」だ。
解かる、解かる、それでいいんだ!!やっちまえ!
■「驟り雨」
本の「タイトル」短編小説。
「まったく!しょうがないやつだ!」
しかし、笑っちゃうな。もー、人が良いと言うかなんていうか、
「まったく!」これしかない!
今でも、コントで使えるネタだ。
■「人殺し」
解かるけど、そりゃヤバいでしょ?
でも、解かります、その気持ち!本当は正しいのかも知れないけど・・・
■「朝焼け」
まったく、あんたってやつは、どうしようもないやつだ!しっかりしてくれよ!
しかし・・・、
「お品」っていい女だなー
■「遅いしあわせ」
そうか、よかった!
■「運の尽き」
ハハハー、所詮色男はこうなるんだ!
でもよかったジャン?
■「捨てた女」
タイトルからしてすごいんだけど、
「まったくもー、遅いんだよ あんたは!」
■「泣かない女」
あー、辛い。お才の言葉が辛すぎる・・。
しかし、
「おい 道蔵!その選択で迷う気持ちは十分解かる。しかし・・それをやっちゃーおしめーだよ」。
でも、最後は、よかった、安心した。
そうだ、それでこそ男だ!
でも、一言、ちゃんと謝ったらどうだ?
心がほっと安らぎます
★★★★☆
泣ける本、心が温まる本というのはよく聞きますが、「驟り雨」は心が落ち着くような物語が集まった短編集です。仕事や生活に疲れた、心がちょっとすさんだかなと感じたとき、人生って案外いいよなって思わせます。初めて藤沢周平作品を読もうと思った人にもお勧めします。