まるでその時代にいるかのような臨場感
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私は歴史には全く素人なのですが、藤沢周平さんの作品は、深く研究されて時代考証がきちんとなされているという印象を受けます。江戸下町の何気ない平和な暮らしの中に、男女のしがらみや賭け事、お金などを材料にさまざまな人間模様が展開されています。藤沢周平さんのファンになっています。
ハードボイルドな人間模様
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四十を超えて初めて読んだ時代劇小説です。
暇つぶしに手に取った文庫でした。
しぶい。とてつもなく、しぶい。
チャンドラーやエルロイや北方(現代もの)とも違う、人間の襞の描き方。
心に染み入る文章とはこのような文章なのでしょう。
日本のハードボイルドとは、時代劇にあったのですね。
「穴熊」は、まさに絶品でした。
潔癖、完全は、時に、絶望的な自己満足になってしまうということが、
悲しくもあり、高貴にも感じました。
藤沢周平を読まなかったことを悔やみ、読んだ偶然に感謝します。
藤沢周平の真髄
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どの短編も傑作ぞろいでひとつとしてはずれは、ない(当然だが)。
その中でも
「入墨」・「潮田伝五郎置文」・「穴熊」の3篇の切なさを味わって欲しい。
この3篇は主だった登場人物それぞれが、他人を思いやることで切なさを訴えてくる。
「切ない」・・・よく聞くし、使う言葉であるが、
この3篇で本当の「切なさ」ということを知ったように思う。
主人公だけでなく、さまざまな登場人物の気持ちになって
これら短編を味わいつくして欲しい。
何度も読まないと、そのよさすべてが、わからないだろう。
藤沢周平って、やっぱり多感な高校生の頃に読むといいと思うなぁ。
ものすごく深い人間になりそうだ。
珠玉の短編集
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藤沢作品が今日の私たちの心を打つのは、パソコンや携帯電話やテレビ、電気・ガス・水道などモノにあふれた生活を享受する一方で、心がさみしいからではないだろうか?この作品に登場する人物はみな、貧しいながらも懸命に生きたり、博打打ながらもなんとかそこからの脱出を図ったりと、一日を一生懸命生きている人物が描かれている。
現在の日々の生活にちょっとした疑問を感じている方には、まさに読むべき一冊だと思う。