素晴らしき「もののあはれ」の世界。
★★★★☆
小学生の女の子がノラ鶏を拾ってきたことで始まる日常生活が
なぜこうも面白く、愛おしいのか。
主人公たちが平気で見せる「アイター」という
変な顔や(これがまたカワイイ)、少しずれた行動。
それは名作『さんさん録』でもキラキラ輝いている
素晴らしき情緒ギャグの世界なのです。
そのしみじみとした調和的な情趣の世界はもはや
もののあはれと言ってもいい。言い過ぎか。
作者が織り成す愛50:ギャグ50の
絶妙なブレンドに只今夢中です。
いま個人的に注目度No.1作家のひとりです。
ニワトリという危険動物
★★★★★
縁日のひよこは非常に可愛いが十中八九親に反対されてしまう。
それはなぜか?
大人は知っているからである。
それがほぼ間違いなく凶暴な雄鶏であること。
そして雄鶏飼育は修羅の道であることを。
それはかつて自分が、もしくは身近な人間が歩んだ道。
かくしてここに修羅の道に自ら足を踏み入れた少女が現れるのだが、これは危険な作品である。
なんとあのニワトリが時々かわいく見えてしまう。
作中でもやっぱり凶暴、間違いなく横暴、なのに可愛い楽しい。
過日の失敗は少女ほどの忍耐と愛情を持ち合わせていない自分にあったのではないかと反省すらしてしまうのだ。
しかし、やはり警告する。雄鶏は凶暴である。
特にこの本を手にした者は気をつけなければならない。
縁日でひよこに近づいてはいけない。
私のようになってはいけない…
明るくなれるニワトリ漫画。
★★★★★
作者さんの実体験をベースにしたまったり鶏漫画です。
ある日出会ってしまった女の子のやよいと鶏のこっこさん。餌をあげたらそのままついてきて、飼うことになるのですが気性の激しいこっこさんは次々にトラブルの嵐を。
そんなドタバタの中で、嫌味がなくさりげなく入る、心温まるエピソードがじんわりと染み入る、素敵な一作でした。
読んでも少ししたらまた読みたくなるあたりも、優れた一作であるということかなと思います。こっこさんはドタバタしていますけど、始終まったりした雰囲気に満ちているのがそうさせるのかもしれません。
鶏、広くいうなら生き物モノがお好きな方は是非読んでみて欲しい一冊です。
ちなみに、お気に入りのシーンは「鈴」と「ラストの羽」でした。
懐かしい生活
★★★★★
一話約8ページの連作で、かわいげのないニワトリ「こっこさん」の飼育日誌の形である。一応、この話の時代は2000年、ということになっている。しかし、描かれている生活は遅くとも昭和40年代のそれである。コンピュータも携帯電話も出てこず、本は図書館から借りてきて読み、誕生祝は自分で描いた絵なのである。何より、現代にあって小学生がニワトリなど飼っていようなら、これは確実に「いじめ」の対象になるし、「チクリン」は学校に行けないだろう。また、主人公の家族「永野家」をはじめとする登場人物は、全員が優しく穏やかな人々である。
これらすべてが、この作者の作品に共通する設定であるという点では、目新しいところのまったくない作品であるが、地に足の着いた生活がいかに貴重であるかを身に沁みて知った読者ならば、この設定が得がたい幸福感の源であることに同意されることと思う。
もっと続きを読みたかった。
★★★★☆
ある日、主人公のやよいがニワトリを拾い、「こっこさん」と名付ける。凶暴で、一見何を考えているのか分からない「こっこさん」を軸に、やよいの一家の出来事をつづる。タイトルはニワトリだけど、実際には「サザエさん」に近いホームドラマ。
家族一人一人に細かな人物設定やエピソードがあるらしいが、残念ながらそれらを全て描く前に完結してしまったようだ。できればまた続編を描いてほしい、と思う1冊。
なお、作者の別の作品「長い道」の重要人物が、間接的に登場している。そして「長い道」にも、「こっこさん」の或る人物が登場する。