“ライブラリー”――さりげないけど、なんて良いタイトル、そして大貫妙子らしいタイトルだろう。その穏やかな手触りは、好きな本や絵と向かいあっている時の心地よさに近い。このアルバムは、シュガー・ベイブ時代の「いつも通り」(76年)から映画『キリクと魔女』のイメージ・ソング「裸のキリク」(2003年)までにいたる全キャリアから選曲されたアンソロジー・ベスト盤で、彼女自身による丁寧な楽曲解説も付いている。
単純に代表曲を選んだというよりは、自分自身が一番新鮮だと思う曲を選んでいるところが、いかにもこの人らしいこだわりだ。最新のデジタル・リマスタリングによる素晴らしい音質もそのこだわりに拍車をかけている。古くからのファンはもちろん、彼女の曲を“点”でしか知らない人にこそ“線”で感じて、30年間変わらぬ瑞々しさを本作で実感してほしい。(木村ユタカ)