保坂和志の小説を、たんなる「ほのぼの小説」だと感じている人は、これを読むと、少しびっくりするのかもしれない。
小説では、文章も内容もほのぼのしていてやさしい（個人的には保坂和志の小説ほど手ごわいものはあまりないと思うけれど）。しかしエッセイになると難しい話が多くなる（ようにみえる）。

でも姿勢は小説でもエッセイでもかわっていなくて、「自分の生きている世界について真面目になればなるほど、社会はもとより自分自身の人生さえもそっちのけになってしまう」と『プレーンソング』の登場人物について書いているけれど、おそらく保坂和志自身がそういう真面目な人間なのだと思う。

小説(世界)を新しいディスクールで語ろうと模索している姿勢、これはとても真面目だし、だから保坂和志の小説はとても手ごわい。