森遙子の文章は美しい
★★★★★
山田詠美や吉本ばななが流行った18年前、10代の頃森遙子の文章に出会った。
『 私は知らない事は書けない』と言った彼女の作品群は確かに彼女自身が色濃く投影されている感じがする。外国文学のようで、下品な感じがせず、どことなく音楽的で美しい文章だ。
作家との相性は文体なのかもしれないが、私は森遙子以上嵌る作家にはもう逢えないと思う。
ああ、中年に差し掛かった夫婦よ!
★★★★☆
今は亡き森瑤子氏が、37才の時書いた処女小説。初めてにして「すばる文学賞」を受賞したという作品です。
彼女自身がイギリス人と結婚したということで、小説もイギリス人の夫のもとで、老いを感じ始めた妻が起こす情事について描かれています。読み出したとき、「山田詠美氏の直木賞受賞作『ソウルミュージック・ラバーズオンリー』に良く似たシチュエーションだなぁ」と思いました。山田氏が森瑤子氏の影響を受けているということなのでしょうか?
森氏の作品は、単なる情事ということではなく、女性が女としての絶頂期を過ぎたときに感じる焦り、性への欲望、守らねばならない日常というしがらみ‥そんなものが切々と迫ってきます。
30代後半から40代の既婚女性に読んでいただけるといい本と思います。
歳を経て
★★★★★
最初に読んだ若い頃は知ったかぶりはしていたけど
本当には主人公のきもちはわかっていなかったと思う。
今まるっきり同じシチュエーションに身を置くとすべての言葉が
本当にひりひりと焼きつく。
大人の世界
★★★★★
作者の処女作ですが、女性なら誰もが通る老いへの不安、女としての魅力が失われていくことへの焦り。
とてもうまく表現されていて、共感を覚えました。
最初の部分で、夏が終わろうとしていた。という短い文章にすべてが集約されていて、見事です。
まだ女盛りなのか、ただ枯れていくだけなのか、問いかけもあるのかもしれません。
おとなの小説
★★★★★
何度読んでも、心の柔らかい部分を針でつんつんされた気持ちになり、涙がでます。「主婦の情事」と一言で表現するとなんともありがちに聞こえますが、ここに描かれている心の機敏はこのような表現では表せないと思いました。とても素敵な本です。