マルクスについて、家庭環境や人物像、西洋哲学史の流れの中での位置、
そしてマルクスの思想と、概括的に風刺画入りで解説されています。
本文中には絶妙のタイミングでマルクスの著作物から引用文を差し挟み、
風刺画も非常に洒落が効いていて、底本のレベルの高さを伺わせます。
しかし、特筆すべきはそのような底本の素晴らしさを損なうことなく
日本語で綺麗に再現した訳者の巧みな訳出です。
初版は1980年と今から30年前でありながら、文中の日本語は2010年現在の水準でも
非常に平易でわかりやすいです。

マルクスの唱える理論は実際はとても複雑なものだが、根本的なスタンスは単純なもの。おそらくこの理論は真の答えを提示するがゆえに、未だその力は色あせないところがあるのであろう。この本は題目が入門と書いてあるだけあって、本当にわかりやすくマルクス主義を説明していて、さらに絵がはいってるところが良い。この挿絵も深いギャグ満載で読むたびにわらわされる。お勧め！

　著者が風刺マンガ家であることもあって、話しの流れやイラストの入れ方、また本文の面白さは絶妙だ。時折、本文に合いの手を入れるようにして繰り出されるギャグは本当に面白い。
　マルクスという難解で近寄りがたいイメージの持ち主を、豊富なイラストの効果で親しみやすく描いている。かと言って、内容は決して軽薄ではない。

　そして出色なのは、マルクスを紀元前から続く宗教や哲学・思想の流れのなかに位置付けて見せてくれる点だ。要するに史的唯物論。これもまた、非常にわかりやすく、また楽しく描かれている。
　なにはともあれ、マルクスの思想が見なおされる風潮もある昨今、ちょっと興味を持った人には是非ともおすすめしたい。