何度も読み返さなければならない。
声を出して笑ってはならない。
こんな条件を出されたら、読む気は失せるだろう。ましてやギャグマンガであるのなら、絶対にこんな条件下で読むことなどできない。
が、「遠くへいきたい」はそんな条件など知らなくとも、勝手にその条件に取り憑かれてしまう。
台詞の全くない9コママンガ。1ページにつきネタは一つ。
なのに、素早く読むことなどできないし、可笑しいのに、声を出して笑うこともできず、尚かつ、何度でも読み返してしまう。
なにはともあれ、読んでみて下さい。その理由、はっきりと分かります。
『TV Bros.』連載の作品をまとめた9コママンガ集。
セリフがないので、そこそこ頭を使う。
とはいえベースはSF、けっして「難解」なわけではない。
また、「不条理」でもない(一貫して、SF的な論理で構築されている――そこがSFの弱点でもあるのだが)。
雑誌掲出時との唯一の違いは、本書巻頭の「できるだけゆっくりお読み下さい。」との断書き。
たしかに、ゆっくりと読んだほうが、よい。
ふとした瞬間、シュワッと静寂世界の中に吸い込まれそうになっている。
いわば視線が凍結し、時間が止まりそうになることがある。
飛ばし読みすると、このトリップ感は来ない。
が、結論的には満点とはいかない。3.7点としたい。
理由を3つほど。
1、SFネタがベースなので、客を選ぶ。
1、メインキャラが可愛くないので、抵抗感がある。
1、オチのパターンが、固定しており(UFOオチ、異次元空間オチ、遠隔操作オチetc.)、度肝を抜くような意外性に乏しい。
1ページ1ページがとてもよくまとまっています。時にコミカル、時にショッキング、時にロマンティック。つい何度も読んでしまいます。こんなマンガ、ちょっと他にはないですよ。