主人公はまさしくかつての若松真人や五代祐作のような優柔不断さ。
その主人公を一途に思い続けるかわいい女の子達。
確かに一部批判のあるように、意味の無いお色気場面やキャラの描ききれていない新キャラが時々登場しますが、リアルではない、ファンタジーとしてのラブコメとしてみればこれほどオーソドックスなラブコメも今は少ないのでは?
昔「みゆき」や「めぞん一刻」に嵌まった世代の人たちにこそ読んで欲しいラブコメです。ここでは新しい物語がまた紡がれています。
少年漫画誌でのラブコメ漫画の確立を'80年代のあだち充や高橋留美子とするならば、この漫画はまさしくその時代の、古典的名作の手法を大胆に取り入れた作品です。リアルでないファンタジーとしてのラブコメ。
優柔不断で頼りない主人公、その主人公に想いを寄せる可愛い女の子達。若松昌人や五代祐作なんて名前を思い出します。20年の時を経て、彼らの後継者たる主人公と純粋で一途な女の子達が再登場します。
今30才を超えている世代には絶妙なノスタルジーとしてこの漫画をお勧めできます。我々が子供の頃に夢中になった物語が、また新しい物語として紡がれているのです。
中でも「西野つかさ」という女の子のミステリアスさが面白い。作者の中でも性格の細かい部分が決められないのか、他の女の子達に比べて実に複雑多岐な表情をみせます。主人公をただひたすら応援する一途さ、明るさ、健気さ、そして時折みせる母性的な雰囲気。この娘の存在が20年前のラブコメよりも進化した部分なんでしょうか。昔のラブコメの女性たちが持っていたポジティブな部分を全てもってしまった感じです。学園物なのに「女神」ともいうべき存在を出してます。欠点を持たない女性。思えば昔の女性は完璧そうでも結構嫉妬深かった。
新しい時代のヒロインとしての「西野つかさ」という存在を知る為だけでもこの漫画を読む価値あると思います(本来のヒロインは別にいますが存在感で完全に他の登場人物を凌駕してます)。逆に辛らつなことを書けばこの娘と主人公との結末次第でこの作品の成否が試されると思います。