メロヴィング朝の始祖クローヴィスについて深い洞察に満ちた1冊。フランク族についての研究成果や、クローヴィスを取り巻く人間関係、当時の世相についての考察を通して、資料の少ないクローヴィスの実像に迫る労作。ゲルマン民族の大移動によってローマは蛮族の手に落ち、西ヨーロッパにおけるキリスト教の権威は失墜した。というのはゲルマン民族の多くが異端アリウス派に改宗していたからだ。そうした状況にあって、カトリックの保護者として登場したのがクローヴィスだったという。
ところで、フランス最初の王朝であるメロヴィング朝は、しばしば神秘的虚飾に満ちた述べ方をされる(特に、トンデモ本の類)。それはそれで面白いのだが、どこまで信じていいのやら、判断に困る。本書はそうした本とは全く異なる。学術書なので読むのは大変だが、それだけに安心して読める1冊、と言えるだろう。