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カペー朝―フランス王朝史1 (講談社現代新書)

価格: ¥777
カテゴリ: 新書
ブランド: 講談社
Amazon.co.jpで確認
ちょっと残念 ★★★☆☆
僕は佐藤賢一のファンであるが、本書はちょっと残念。小説家だから人間模様を描くのが中心になってしまうのかもしれないけど、歴代の国王を一人一人書いていくスタイルは、飽きる。ワンパターンな感じがした。もう少し、カペー朝期のフランスはどんな時代だったのか、その息吹が伝わってくるような書き方が欲しかった。狭い王室の中の話だけでは、物足りなかったので、星三つ。続きがあるようなので、そっちに期待したい。
こんな身近になった(?)フランス ★★★★☆
考えてみれば、日本の皇室だって125代になるのだから
中国やインドとはいわぬまでも、そこそこの口述じゃない歴史のある国なら
何十人もの王様や支配者がいただろうととはあたりまえかもしれない。
もちろん、日本人の大好きな国フランスもその一員だ。

ところがフランス革命で断頭台の露と消えたのが
カペー朝系のブルボン王だとは知っていても、
じっさい系統立てて多少わかるのは、アンリ4世から始まるこのブルボン朝ぐらい。
カペー朝全体で800年に及ぶフランス統治(?)のわずか1/4、せいぜいが200年だ。
その他の普通は切れ切れにしか知らない、フランスの王様たちの歴史第一弾がこの本ということになる。

そんな点からいえば、一般的な書物として
そのあたりの事情を知ることができる初めてのモノじゃないだろうか。
なんといってもそこがまず素晴らしい!
次は、14人350年を見事に新書版のサイズに収録したところ。
やったことや逸話で長短はあっても、まずまず見事なバランス感覚だ。
そして内容と語り口。ひょっとしたら小説以上に、この手のものの方が佐藤賢一向きかも……
と思わせるだけのものになっているところがすごい。

と、一気に楽しんだところで疑問がひとつ。
大好きフランスとはいっても所詮は遠く離れたヨーロッパのこと。
本カペー朝14人の王様のことをしっかり知りたいと思う向きがどれくらいいるのかな、
と思った結果が、マイナス1ポイント。
フランスの黎明期を担った王たちを活写する好著 ★★★★★
中世のフランス王はラテン語で"Rex Francorum"を称したが、FrancorumはFrancusの複数属格であり、

時代により「フランス人たちの」とも「フランク人たちの」とも翻訳可能である。

実際987年ユーグ・カペの即位により突如「フランス王国」が成立したのではなく、

10世紀初頭には「西フランク」の「西」は取れていた(東及び中央フランクの断絶により敢えて区別する必要がなくなっていた)という。


さすれば「フランク」と「フランス」の違いは発音の違いのみなのか。

著者はそのようには見ず、分裂したフランク王国を再興したカペ朝の偉業を強調する。至当である。

但し「フランス」が明らかに「フランク」に由来していることに加え、

著者の言うようにフランスがクロヴィスの王国の中核に位置することに鑑みれば、

フランスがフランク王国の正統な後継者であると言っても強ち誤りではあるまい。


尚、ユーグ・カペの祖父ロベールは(西)フランクの玉座に登極以前、

カロリング朝の王から"Dux Francorum"に任ぜらていた。

この称号はしばしば「フランス公」と訳され、

ラテン語のduco(率いる)に由来するduxには軍事司令官としての意味合いが強いが、

ここでは「フランク人たちの指導者」といった意味に取るのが宜しかろうというのが著者の解釈である。


さて、カペ朝の王と言って先ず思い浮かぶのはフィリップ尊厳王とか聖王ルイあたりであろうか。

列伝形式を取る本書はしかし、我が国では知られていないマイナーな諸王も含めて一人一人に光を当てており、

当初は「同輩中の首席」に過ぎなかった王たちが堅固な王権を確立していく過程が活写されている。

次巻が楽しみである。
歴史を活き活きと描写した筆力は流石 ★★★★☆
 私、フランク王国(と言っても名前程度)→ルイ13世、以降の知識(教科書に毛が生えた
程度)しかないので、「その間はどうなっているのか?」という点については、本書を手に
取るまで知らなかった人です。まさに「はじめに」書かれている人の典型例です。

 本文では「さもその目で見てきたかのような、活き活きとした描写」で、「人間味あふれる
カペー朝15代の王様(と言っても、内1名は即位後数日で死んだので、実質は14名)」、時に
直すと300年の歴史(徳川幕府以上だ)を、描いているのです。本文250p弱の本に300年の
歴史を圧縮しているので、当然、概略になってしまいますが、とっかかりの人には問題
ありません。
それに本書の強みは前述した、歴史書とは思えない活き活きとした描写にあります。

 一国の王が・・・世継で悩み、嫁姑問題でも悩み、そして国土の拡大に比例して、その
管理方法で悩み、挙句の果てには戦費調達で悩む・・・こんな話を時の王と周りの人
(両親か寵臣になる)が、どのようにして乗り越えていったのか?と言った話を『双頭の鷲』
等で、読者を魅了した著者が記していくのです。面白くない訳が有りません。

 フランスと言う国は何処からやって来たのか?(フランク王国が元なのは、多くの方が
知っているでしょう。その先に迫ります)、王様は何処からやって来たのか?(カペー朝と
日本の戦国時代は相似していた)、王とは言え、実際は(今でいうフランス国内の)一地方
豪族でしかなかったこと、世俗権力と宗教勢力の関係、フランスとイギリス(イングランド)
の戦いの歴史・・・等が次々と明らかになります。

 中世ヨーロッパ史に興味がある方にはお勧めの一冊です。続編(本書含め全3巻の予定)
にも期待です。
カペー朝の王の人間的物語 ★★★★☆
直木賞作家にして西洋歴史小説家の佐藤賢一氏がユーグ・カペーからシャルル4世まで、300年間に亘るカペー朝の歴代の王一人ひとりを描いたものです。
小説ではなく、また壮大な歴史観に基づくものでもありませんが、各王の結婚、世継ぎ、領土の拡大、宗教とのかかわりなどを丁寧にそして物語性豊かに描いています。中世のヨーロッパの歴史を読んでいてイタリアにフランス王の領土が広がったりするのが非常に不自然に感じていたのですが、ここに書かれたような中世的かつ人間的視野から見るとよく理解できました。
私にとってはルイ9世とカタリ派せん滅活動、テンプル騎士団の処罰とフィリップ3世の立場など宗教と政治との関係に面白い話が多くありました。また、聖者に叙せられたルイ9世の名前がサンルイ島やセントルイスのもとになっているとか、カペー王朝のカペーがポルトガル語から日本語になった「合羽」と同義語であったという話などトレビの泉的興味深い話もいろいろあります。
今後出てくるであろうフランス王朝の続編が楽しみです。