列強に半植民地化される中国
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安政4(1857)年のアロー戦争で、中国をほしいままに蹂躙した英仏は、アヘンの合法化、
九龍半島割譲、中国人の海外渡航の許可(実態は中国人労働者を奴隷同然に大量移住
させるという人身売買)などの無法な要求を中国に突きつけ、半植民地とした。
さらに、戦争終結の際、中国と英仏の仲介をしたロシアが、参戦
せずして、日本全土よりも広大な領土を中国から獲得してしまう。
その土地には、ロシア建国以来の悲願である不凍港も含まれており、
すぐに一般立ち入り禁止の軍港にされ、ウラジオストックと命名された。
ウラジオストックとは「東方を支配せよ」という意味で、侵略スローガンが、
そのまま地名にされたわけだが、ここでいう東方とは、むろん日本のこと
である。
一方、江戸に鳩居堂を開いた村田蔵六のもとに川路聖謨が訪れ、
蕃書調所で、最新の兵学書の翻訳をすることを依頼する――。
名作は承知の上で
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坂本龍馬、村田蔵六、勝海舟、そして中国事情が主な話題の巻であるが、延々と続く大河物語の一部であるから、ここから読み始めても仕様がない。それにしても、各回の話題・主人公がまちまちなのはドラマトゥルギーとして問題があると思う。「風雲児たち」本編のように、ひとりにある程度焦点を定めて描くことはできないだろうか。これでは、前にどこまで行ったか忘れてしまう。贅沢を承知で言うなら、めまぐるしく多面的すぎるのは読者に対して酷だと思う。
上品なユルめのギャグは現代のささくれだった漫画に慣れた目には古く感じられるだろうが、大人のギャグとはこういうものである。それにしても、いつ終わるのだろう。
いよいよ焦点が合ってきた!
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関ヶ原から始まる、長〜い「幕末モノ」の幕末編11巻(関ヶ原から数えると何と31巻)。今回は、龍馬・村田蔵六・勝海舟の三名にスポットが当たり、脇道に逸れることが少なくなっています。それはそれで寂しくはありますが、いよいよ物語が大政奉還・明治維新へと集約されてゆく様子がうかがえます。徳川慶喜の登場、戦乱続く中国の状況など、緊張感が増してくるようです。
真面目一筋に攘夷を心に秘める武市半平太と、自由奔放で外国に興味津々の龍馬との不思議な友情も面白く、シリアスな場面でもギャグを貫く著者の筆力はさすが。他、アロー号戦争や太平天国の乱、帝政ロシアのウラジオストク獲得など、知っていたようで知らなかった史実もふんだんに(あくまでギャグタッチで)盛り込まれています。早く先が読みたい作品です。
中国の情勢が幕府を揺るがす
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相変わらずのみなもとギャグで11巻目まで来ました。
欧米列強が中国にアヘン戦争を仕掛け、あっという間に植民地化されていく状況が頻々と幕臣や風雲児たちに伝わっていきます。
今と違って不確実な情報ですから、尾ひれがついていきます。
本巻は、彼らの焦りや息苦しさをとてもうまく表現できている感じがします。
それが臨界点を超えて、御一新に結びついたんでしょうが。
物語としてはまだまだ、エネルギーを蓄えている段階ですが。
今までのどの作品より、幕末の雰囲気を最もよく表現しているかも…。
この巻のサプライズは、中国が侵略されていく情報が結構正確に幕臣たちに届いていたことでしょうか。
ま、残念ながら、彼らはそれに耳をふさいでしまっていたわけですが。
大政奉還まであと10年足らず
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巻末あたりで著者自身が登場人物の多さをコメント(?)しているくだりがあるとおり、幕末になりさらにたくさんの人物を追っていくことになるので、また最初が雑誌掲載であるということと併せて、どうしても話がエピソード的になってしまうのはやむを得ないところかもしれない。
この巻では、坂本竜馬をメインとした話、村田蔵六が蕃所調所にかかわっていくことになる話、海軍伝習所の話、吉田松陰の話に、太平天国の乱まで加わっているのだから、ともかく話を追っていくしかない。
それにしても遅々たる進み具合のマンガと言われながら、ここまで来たではありませんか。