ある遊女の死とハリス来日
★★★★★
安政の大地震の際、火災が発生したにもかかわらず、吉原では遊女
三千人の逃亡を恐れ、大門をはじめ、すべての出口を塞いでしまう。
焼死した遊女は、五百から千人とも伝えられている
が、そのなかには、高野長英の娘・おモトもいた。
親の因果に祟られ、遊女として過酷な生活を送っていたおモトが、天災により問答無用で
命を奪われてしまう……。あまりにも痛ましく悲惨な運命に圧倒されるが、彼女にとっては
その天災が、逃れられない不幸の連鎖を断ち切る救いだったのかもしれない(異説もあり)。
一方、安政3(1856)年7月には、伊豆下田にアメリカ総領事ハリスがやって来る。
ニューヨーク市教育委員長として、アメリカ初の授業料免除大学の設立を成し遂げた
ハリスは、いまだ外国に対して閉鎖的な日本を啓蒙し、解放しようという情熱に燃え
ていた。
彼の登場により、日米関係は、新たなフェーズを迎えることになる――。
最初からじっくりと読みましょう
★★★★★
史実を巧みに織り交ぜたギャグ、つい「こいつに会ってみたい!」と思わしめるほど魅力あるキャラクターたちは健在。ギャグものが中途でシリアスに変貌していくパターンが多い中で、この作品はつねに軽いタッチのギャグを貫いている点は賞賛に値します。あっという間に、本当に楽しく幕末史を理解できます。
しかし、作者の欲張りのためか(笑)、主人公級の登場人物が複数いるためか、話があちこちに飛んでしまうのは惜しい。むろん、余談や外伝的要素もとっても楽しく読めるし、勉強になるのですが、全体を通して見たときにはやや散逸な印象が残ります。
本当に楽しめるようになるのは、完結した時、それも最初から一気読みした時でしょう。ともあれ、今巻も間違いなく楽しいです。村田蔵六の奇異なキャラが引き立ち、彼とイネとの微妙な関係もますます楽しみ。徐々に進み始める幕府崩壊の伏線がいたるところに見られ、ラストで龍馬再登場。「いよいよ始まる」というどきどき感が高まってきます。ぜひ「幕末編」最初から(できればワイド版から)じっくりお読みください。シリーズ通して傑作であることは間違いありません。
複眼的作品の弊害
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大河ドラマ第10巻。安政年間である。すでにお馴染みの人々が本書にも登場する。刺激的でも陳腐でもない、微妙だが笑えるギャグが満載されている点もこれまでと同じ。しかし、最近私は、この作品にやや疑問をもっている。
主題がいくつもあることの弊害が、出ていると思うのである。「風雲児たち」本編では、特定の人物に一定期間光を当てて物語を進めていたから、問題はなかった。一方、幕末編では多数の舞台を同時進行させているため、散漫な印象になっている。以前にどこまで読んだか、何を読んだか、はっきりと覚えていないから、私はその場限りで楽しんでいるに過ぎない。
この一冊だけを採り上げて云々することに大きな意味はない。物語が終わり、単行本が全部揃ってから読み直さないと、この、まんが史上特筆されるべき作品の全貌は見えないのではないか、と思う。
竜馬、江戸へ
★★★★★
相変わらずのみなもとパワーです。
竜馬が、江戸へ来たところを描かれているのは最後の一コマだけですが…。
この巻でも、作者思い入れの吉田松陰、村田蔵六、勝海舟らの活躍がえがかれます。
今回のサプライズは勝海舟が船酔いしやすいこと!でしょうか。
そして、神様のご先祖、良仙氏の活躍も描かれます(ギャグで)。
ホントは、直参旗本が思いっきり”腰抜け”だったために、江戸は幕末の戦火を逃れたんでしょうかね。
まあ、勝海舟のような人物が居たからでしょうけど。