奇跡の一枚。
★★★★★
息子の漣さんが、中で思わずつぶやく。
「今日はいつもより調子いいよね。」
高田渡さんが、自分で自分のことを称して冗談みたいにつぶやく。
「今日は、息子の漣と一緒にやります。こういうことは滅多にありません。最初で最後かもしれません。あんなに元気だったのに・・・ということもある。」
そんな言葉が染みる。
プロデューサーの、「渡さんのライブは、息子の漣さんが一緒にいる時は、まともである確率が高い。」という読みも、いろんな偶然も重なったのだろう、終始まっとうで、歌声は後半に進むに従って次第に熱を増してくる。
へべれけになって、本当にステージで寝てしまう渡さん。客に起こされて、ギターも歌詞もおかしくなりながら歌う渡さん。それを嬉しげに優しく見つめる女たち。ああ、これが高田渡の伝説のシーンなんだとでも思うのだろうけれど、・・・。そんな姿もよそでは見たことがある。でも、そんな姿は、僕には、ほほえましいというより辛かった。女たちよ、そこは笑うところではないだろう、そう思った。
高田渡は、なぜ飲んだくれていたんだろう。
そんなことを思いながら、ここで「生活の柄」を聞く。
心に染みる。
高田渡が、(ほぼ?)素面で、一枚しっかりライブをしている。もっとも、例の調子で、途中で息子に、「お前ちょっと一曲やっておいてくれ。」なんて言い置いてよそに行ってしまうけれど、そんな甘えがまた温かく彼を励ましたのかもしれない。ついでにステージ脇で一杯ひっかけて来たのかもしれない。とにかく、戻ってからの歌は、更に一層素晴らしく、彼の最高の出来のライブだと言える歌声が響く。その場に合わないけれど、「鬼気迫る」なんて言い方をしてもいいのかもしれない。聞きこんでいるうちに、やがてそんな気がしてくる。ギターもしっかりはじかれて、力強く美しい。漣さんとの音楽を通じたホットな絡み合いも、音楽アンサンブルとして、超一流の素晴らしい出来だ。
その上、歌が染みる。
これが、こうして手に入る形で残された。奇跡的な幸運だと思う。聞けてよかった。
心にしみます。
★★★★★
CDの中のブラザー軒。
戦争で、親族のかたが亡くなった人は涙無しでは聞けないと思います。
日常を歌い、戦争に反対する事を訴えていた高田渡。
生前のライブを聴きたかったなーー。
とても良いです!
★★★★★
まるでおとぎ話でも聞いているような、落語でも聞いているような、今ライブハウスにいるような、すぐそこに高田さん親子がいるような、とても素敵なCDでした。つぶやくような、語りかけるような、・・・購入してから何度も聞いていますが、全部がいいです。高田さんのCDを始めて買いましたが、他のも聴いてみたいです。
目を閉じればそこに彼が居る
★★★★★
ギターのチューニング、語り、ぼやき、迫力の歌、このCDを聴けばいつでも高田渡のライブに行けます。すごくクリアな音です。
オチ
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私は高田渡を死と同時に知りました。
それからも「自衛隊に入ろう」ぐらいしか聴いたことはなかったのですが、
妙に心の片隅に残っていた人でした。
それで今回何か一枚買おうと思って検索をかけると真先にこのジャケットが。
正直ジャケ買いです。高田渡の渋い髭面の横顔がすごく何かある感じがする。
あと親子競演というところ。
聴いた感想はとても重みがあった。後半にかけてはちょっと言葉を無くす。
それはもうCDの解説の方が述べている通りです。
「生活の柄」の最後のセリフはかなりグッときた。
レビュアーの方も言ってますが正直「オチ」なんだと思います。
これ聴いたら他のはもう聴かなくていいみたいな充実感がある。
恐らく様々な高田渡があるのだと思います。
しかし高田渡ファンの方々には反感を買うでしょうが、
ここには高田渡の真髄の一部がかなりわかりやすい形で表れていると思えます。
そういう意味では入門にもいい。
ただ個人的にはもうこれ一枚でいい。
高田渡さん、ありがとうございました。