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ナチュラル・ウーマン (河出文庫)

価格: ¥651
カテゴリ: 文庫
ブランド: 河出書房新社
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男性には やはり女性は分からないのか? ★★★★★
 松浦理英子は寡作である。出された本は 数えるほどしかない。しかし その存在感は相当なものである。
 本書は 女性作家が描く 女性の同性愛の話である。男性の僕としては ある意味で そうしようもなく分からない状況であるとしか言いようがない。

 基本的には 人間には男性と女性しかいないと思う。例えば 男性でありながら心は女性であるという方もいらっしゃるわけだが その方を「女性」とジャンルしてしまえば 引き続きその2種類しかない。

 男性に属する僕にして 本書を読んでいると 「女性」というものは分からないものであると つくづく思った。「女性」の考え方、生理、本能といったものが なまなましく描かれているのが 本書なのだろうと かろうじて思っているが そのなまなましさ自体が 本当なのかどうかもわからない。

 そんな迷宮に迷い込んだ思いを強く感じさせるのも本書である。

うーん。生々しかったです。でもうまい。 ★★★★★
つくづく、女でないと書けない小説だと感じた。女の同性愛の話だからではなく、行間から立ち上ってくる生々しいまでの生理感覚が、まさに女特有のものだから。愛するということは、自分の身を削って、すり減らしていくことなのだろうか。でもそれこそが青春なのかも知れない。どんなに絶望しても裏切られても、人は愛することをやめられないのだから。
生々しく立ちのぼる女肉の匂い ★★★★★
恋愛(といっても同性愛だけど)の辛さ、喜び、切なさを克明に描いている。それだけでも十分読むに値すると思うが、そのあたりは他のレヴューに譲るとして、自分が特筆したいのは、読んでいて女陰のにおいが生々しく立ちのぼる稀有な作品だという点だ。これは比喩で言っているのではなく、幻臭とでも言うか、本当にそのようなものをはっきりと実感した。あと下着や生理用品の匂いも。こんなにも匂い立つ文章を書ける作家は世界中探してもなかなかいないのではないだろうか。ほかにいたらぜひ教えて下さい。
至高の愛のひとつの形 ★★★★★
「私」をとりまく、三人の女性との愛の物語。時間がさかのぼってゆく構成になっており、これは面白い手法だ。夕記子、由梨子、花世の中で、結局「私」にとって一番意味があるのは花世との関係だ。「私」にとっての愛は、花世との緊張関係の中に存在する危ういものだ。花世に取り込まれたいという欲求は、花世に拒絶されることによりまた高まり、それゆえ狂おしいほどに花世を求め、また拒絶される。そうした矛盾の中に「私」は自分のあり様を認める。決して成就しない愛。「毛皮を着たビーナス」や「痴人の愛」にも通じる、ひとつの至高の愛の形がここにもある。性器を巡る「私」と「花世」のやりとりは本当に興味深い。
ヒリヒリうっとりする恋愛 ★★★★★
 こんなに痛い恋愛はないのかもしれません。好きで好きでたまらないのに、一緒にいるとお互いの身を削っていくような恋愛。身体も心もヒリヒリするような交わり。こ気味よく展開される甘くて痛い会話。

 どれも読んでいてきりきりするような痛さを伴うのに、なぜかうっとりとしてしまう。読みながら彼女たちの関係にどこか憧れをもってしまう。それはたぶん彼女たちの関係がとてもピュアだから。日々の生活で忘れてしまいそうなくらい、痛いほどの純粋さ。

 おばあちゃんになっても、私は本棚からこの本を取り出して、うっとりと彼女たちの関係の中にヒリヒリとしながら夢を見そうな気がします。