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深爪 (集英社文庫)

価格: ¥520
カテゴリ: 文庫
ブランド: 集英社
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中山可穂、最高の作品! ★★★★★
この「深爪」は、彼女の作品の中で、最高傑作と言っても大袈裟ではない。
私はこの本を手にとってすぐに、彼女のファンになったくらい。
内容はあえて触れずにおく。

「深爪」に至るまでの彼女の作品は、どちらかというと
なんだか切ない気持ちにさせられた。
だが、この本はもっと人間の深いところまで考えさせられる、というか・・・。

切ない気持ちと優しい安堵に似た感情を、何度も持った。
是非、中山可穂ファン以外の人にも読んで欲しい。
きっと、ファンの方はすでに読んでくれていると思うから。

そして、あとがきを読んで、中山可穂に興味を持つだろう。
なんだかミステリアスな彼女だから、追いかけてみたくなる。
三者三様の藪の中 ★★★★☆
3編の中編は、主人公を変えながら、一つの物語をなしている。
「深爪」は人妻との恋愛に絶望し、別れるしかなくなった女性の物語。なつめが蚊帳の外から恋人の吹雪を想う孤独は、昔の恋を思い出して懐かしくなった。なつめにはシンパシーを感じる。すると、当然のように吹雪が嫌に感じた。
「落花」の主人公は、その吹雪。自分のセクシュアリティを意識しながらも結婚して、子どもを生んで、夫の了解のもとに女性と浮気を繰り返し、なつめと出会った女性。吹雪の行動にずるいと思ってしまう。なつめも、夫も、息子も気の毒になる。
「魔王」では、吹雪に出て行かれた夫マツキヨが、子どもを大事に育てようとする。この章が秀逸で、夫のまなざしから補完されることで、やっぱり吹雪の人物評価を下げたくなってしまう。

だけど、回りまわって、不倫には向かない吹雪の性格には、同族嫌悪のような親近感もある。向かないのなら、しちゃいけないのに。しなきゃいいのに。誰かを裏切り、傷つけるのに。わかっていても止められない出会いの後に読んだから、私にはタイムリーすぎて、気持ちのアップダウンが激しい読書になった。
周りが見えなくなるような恋をしている人ではなく、その恋の周りで振り回される人々を描いた点が、読みどころではないだろうか。
甘辛く苦い ★★★★★
周囲には男女間での不倫とか浮気とかが多い。

それで、深爪を読んでみたいと思いました。

バイセクシャルというだけでレズビアンには嫌煙されがちだと思うのだけど、妻という存在を愛する人間が女性であっても男性であっても考える事は同じなのだと感じる。

中山可穂さんの作品を見たのはこれが2作目になりますが、女性同士の情愛を重苦しく、でも美しく表現されている文章に惚れています。

夫や子供が居ながらも女性に溺れていく、本当の愛は身体の相性だけではないことなど…本当に深い。

自分の思い描く最高の恋愛とは何なのか?と考えさせられました。
ひとつの変化を遂げたのは、ここから ★★★★★
現在の中山氏の筆致からするとかなりの若さが見受けられるのは否めないが、氏の短編の特徴ともいうべき、たおやかさや逞しい人間像は変わらずある。
本書は連作短編集である。一編目『深爪』を読んだ時は、ヒロイン・なつめが中山氏お得意の“荒れ気性ワガママ人間”だったため、その波乱ぶりに「おお、きたきたぁ」とほくそ笑む反面、やや食傷を覚えていた。そして『落花』に進み、なつめとは全く異なる性格の〈あたし〉がヒロインとなっているのに気づいても、「このヒロイン心情を書くとしてもきっと、なつめのワガママに引きずられたような言い訳がましいものになってしまうのだろうなあ」とすっかり先入観を持って読んでいた。しかし、これが見事に外れた。〈あたし〉の心情も、『深爪』に負けず劣らずの頑なさで描かれている。〈あたし〉の意志がはっきりと見えるのだ。そして『魔王』ではいよいよ唯一の男性が主人公だ。ここでも、“残された者”としてのいわゆる未練を書くのではなく(つまり他者の存在に付随した思考を書くのではなく)、マツキヨという人間の心情が独立したかたちで描かれている。
三編とも烈しい恋を軸にして書かれたものであるにも関わらず、その烈しさのみに引きずられることなく、三人の人物の心情を均等に書き分けているのだ。
私の勝手な推測だが、中山氏は『猫背の王子』や『天使の骨』、『マラケシュ心中』などの長編に見られるような“荒れ気性ワガママ人間”を最も愛おしんで描く人なのではないかと思う。そのため、本作においてはどうしてもなつめの心情を書くのにより意を注ぎがちになってしまうのではないかと思っていた。ところがいざ後二編を読んでみるとどうだ、三人とも凛とした意志がそこにあるではないか。
やられた。私の懸念はただの余計なお世話だった。
三人それぞれの心情を偏ることなく書き分けていたことで、中山氏の、いろいろなマイノリティーに対する愛情を確認できた。
ちなみに、氏は最近(2008年4月現在)のインタビューで、こう語っている。
「私がいつも書いているのが、弱い人間がたくましくなっていく、その様なんです。」
本当にこの言葉に表されるような作品は、氏の作品の中では、本作が最初だったと思う。
・・・・・ ★★★★☆
同じ恋愛をしたバイセクシュアルとして、お勧めします。
恋愛中は、「マラケシュ心中」だと信じていたのですが、大どんでん返しで、結末は中山氏の作品のなかで一番軽いと思っていた「深爪」でした…。よくあることなのかもしれません。
異性愛、同性愛を問わず真剣な恋愛は「マラケシュ心中」ですが、紙一重で「深爪」に転落することをお忘れなく。