狐狸庵先生だいすき
★★★★☆
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遠藤周作といえば、堅めの純文学作品を多く生み出したことで知られる。
とりわけ、有名な『沈黙』をはじめ、日本を舞台にキリスト教をモチーフとした作品を多く書いた。
一方、彼は狐狸庵という名でエッセイも多く書いている。
本書は新聞および雑誌に連載されたエッセイをまとめたものである。
堅い作品を書いた後は特に、狐狸庵になって下らないことを書きたくなるとあり。無類のいたずら好きとして知られる著者であるが、びっくりするエピソードがたくさんあって、飽きない。それから下品なネタ大好き、不器用で弱気な人間くささも大好きな、すごい自然体である。
あまりの正直さに、つい話に引き込まれる。
自分の髪が薄くなった時の惨めな思いや、ファンからの手紙はとても嬉しいこと、はたまた近所のオバタリアンたちに心底辟易する様子など。リアルで読み甲斐がある。読みながらひとり、何度も吹き出してしまった。
あるいは彼は旅好きでかなり色々な場所に行っており、また作家を中心に交友関係は充実していたようで、そのこともエッセイに花を添えるエピソードにつながっている。
たくさんの話が詰まっている本書であるが、私が気に入ったものの一つが、
「サマルカンドの石」。会議でウズベクに行く際、知人から当地の石を土産にほしいと言われた。そこで、狐狸庵は約束を果たすが、何の変哲もない石であるため、同行していた伊藤整、野間宏、加藤周一の三氏に証明のサインをしてもらう(笑)大人とは思えない。なんて楽しい人なんだ!で、彼自身もお土産にもらった石をいくつも机の中に大事にしまっている。その石に触れるだけで異国の、遠い昔の人の息吹を感じる遠藤さんに、ぐっときた私。
その他いずれも肩の力を抜いて、ぶふっと吹き出しながら読めば至福だ☆
私は仕事の昼休みなど、ご飯を食べながらさえ読んでいました(^^; お行儀が悪いなぁ。あ〜面白かった!!
遠藤周作すき
★★★★★
遠藤周作を長らく単なる面白いエッセイ書く人だと思ってました。息子のガールフレンドからの電話に息子の声色で本人のふりをしてイタズラしてみたり、東洋英和付属高時代の阿川佐和子の武勇伝を、友人(阿川 弘之)の娘の話として書いちゃったり、なんでもありです。遠藤のいたずら好きは、第三の新人世代には広く共有されてたみたい。例えば、吉行淳之介が妖艶な顔で、若く美しい酌婦の角化した踵に甲をあて「苦労しているなあ」と呟いてモテたの傍で見て、別の酌婦に同じことをしたら「ちょっと、くすぐったいからやめて」と言われて凹んだとか、そんな感じ。とにかく毒のないユーモアとイタズラとでは狐狸庵先生は時代を超越しております。文学作品との凄まじいギャップが好ましいです。
ぐうたら人間学 (講談社文庫 え 1-13)
★★★★☆
『「君はなぜ、狐狸庵などという年寄りじみた名をつけるのだ」
そのほうが年取ってから楽でしょうと私は答えた。年をとってから周作などというキザな名を背負って生きるのはシンドイという意味だった。』p89より
タイトル…ぐうたら、ここにきわまれり!
構成…著者の日ごろ起きたこと、思い出などを書き綴った、随筆
私、笑いました。
おそらく、この本を読んでクスリとも笑わない人はいないのではなかろうか。
遠藤氏の風刺と皮肉とオゲレツとイタズラ心と茶目っ気と暖かさが、飄々とした文体から伺える。
下ネタが生理的に嫌い、というかたは少し薦めることを躊躇ってしまうが、今のところ私が「読んでご覧なさいな」とすすめた人は総じて笑顔で「かしてくれてありがとう」といってくれた(こんなこと滅多にないんですよ?)。
こんな風に年をとりたいものだ。
素顔の遠藤周作
★★★★★
を見られるエッセイ集だと思います。キリスト教の小説家として名高い遠藤周作ですが、私はこの本を読んで遠藤周作のイメージが変わりました。ちょっと「はにかみ屋」で「いたずらっこ」で、そして寛大な心をもっているおじ様、それが遠藤周作の正体なのです。世の中をひねくれた視線でで見つつも、暖かい心で私達読者や作者の周辺の人ををつつんでくれる、遠藤周作の魅力にふれることができました。