関係性理論に興味をもつ方必読
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関係精神分析の入門書にして、ミッチェルの”まとめ”とも言えるかもしれません。
分析過程の中で起きてくる関係性について、近年注目が集まっています。
治療の中で、クライエントとセラピストは相互に影響し合っているという観点は、確かにその通りとして、果たしてセラピストはそれをどのように治療に生かしていったら良いか、それが難しい問題です。ここには、この事へのヒントがあると感じました。
弁証法的に考えていこうという態度もまた、勇気を与えてくれる部分があります。たとえば、希望について。分析には患者の希望が持ち込まれる。それは「本質的に退行的で成熟した実りある体験を妨げ」るもの(ボリスが言うところの放棄されるべきもの)なのか、それともウィニコットが言うように「前進的で」成長に必要なものなのか・・・。ミッチェルはそのどちらでもないと言います。「患者の持つ最初の希望は、様々なやり方で理解され用いられるのに役立てられるのである」と。昔ながらの希望がもっと実用的なものになるには、セラピストと患者との相互作用の中で変容することが必要・・・と。その意味で、分析家は自分の希望と怖れを自覚することが必要なのでしょう。