古代エジプト文明の入門書
★★★★☆
これまで読んだエジプトの本といえば、歴代ファラオの足跡をたどる歴史書やヒエログリフの解説書などが多かったが、本書はエジプト文明全般を取り扱っている。
古代エジプト人の衣食住から農業や牧畜などの生産手段。或いは王権や官僚組織といった国家の基本構造、またその成り立ちに深く影響を及ぼしたピラミッドに代表される巨大王墓の話。更には文字や美術に関することから当時の人々の来世観まで、よく一冊にまとめることができたなと感心するほど、エジプト文明について幅広く、簡潔に説明されている。
古代エジプトに知識がない人でも、この本だけで十分にエジプト文明の基礎が理解できる内容になっている。また、より深く知りたい方には、巻末に丁寧に紹介されている参考文献が役立つとも思われる。
なお、本書は文明の形成に焦点が当てられているため、長く続いた古代エジプトの歴史の中でも、特に初期王朝から古王国時代、つまりエジプトの王権が芽生え、確立した時代に重点が置かれている。そのため華やかな新王国時代のラムセス二世やツタンカーメン王などは登場しない。
エジプト、或いは考古学好きな方なら読んで損はないお勧めの一冊である。
資料を通して文化を知る
★★★★★
古代エジプトについての本を開くと、
歴史や、特に新王国時代の王族に関する内容を扱うものが多い中で、
この本は、先王朝時代から初期王朝、古王国時代までという、
タイトルどおり、古代エジプト文明のはじまり、
特に、文化に焦点を当てたものです。
資料画像が多いので、
説明されていることが目で分かり、とても説得力があります。
「地に足の着いた」内容ですから、
古代エジプト文明が宇宙からもたらされた、ムー大陸からの伝播だ、と考える人には、つまらない内容だと思います(笑)。
逆に言うと、
古代エジプトの人々が、上下を統一する前から、すでに着々と「開花に向けて」準備されてきたのだな、ということが、とてもよく伝わります。
葬祭、食料調達、農耕、牧畜、家屋など、カテゴリー分けをして、
それぞれがどう変化していったか、具体的に説明してくれるので、
古代の人々の生活がまざまざと浮かぶようで、とても楽しめました。
難しすぎるものではなくて、でも内容は充分。
古代エジプトの文化を、しっかり知りたい方におすすめします。