生命の起源に挑む冒険の軌跡
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19世紀、パストゥールの“白鳥の首フラスコ”の実験によってアリストテレスの生物自然発生説に終止符が打たれると同時に人類を悩ませ始めた謎──生命はどうやって誕生したのか。1920年代に提唱されたオパーリン/ホールデンの化学進化論と'53年のミラーによるメタン・アンモニア・水からのアミノ酸生成実験、同年ワトソン/クリックのDNA二重螺旋構造の発見により始まった分子生物学とその発展、そしてボイジャー・ヴァイキング等による太陽系探査によって明らかにされつつある生命誕生の条件。本書は、未だ道半ばのアストロバイオロジー(宇宙生物学)のこうした歩みを化学の門外漢にも理解できる平易さで紹介しつつ、未来に開かれた展望へと読者を誘う。現在、1億種あまりといわれる地球生物はすべて“コモノート”と呼ばれるたった一つの共通祖先から始まったという。DNAをもとに自己複製を繰り返す核酸生物という点で、地球上にはたった1種類の生命しか存在しない。アストロバイオロジーの発展にともない、様々な環境下で他のタイプの生命が誕生しうる可能性が模索される。生命の定義すら書き換えを迫られるような未知の生命との出会いにロマンが掻き立てられる。