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ろまん灯篭 (角川文庫クラシックス)

価格: ¥432
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川書店
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くじけそうなときに「秋風記」を ★★★★★
 太宰治の文庫本を1冊選べといわれたら、私はこの本を選ぶ。表題作もいいが、なにより「秋風記」がいい。

 「あの、私は、どんな小説を書いたらいいのだろう。私は、物語の洪水の中に住んでいる。役者になれば、よかった。私は、私の寝顔をさえスケッチできる」

 という文章で始まる「秋風記」。太宰が自分の弱さを、過剰な演技なしに素直に綴った小品で、世評は高くないけれど、ボクにとっては太宰の最高傑作。等身大の太宰がこの作品のなかにいる。
 
 くじけたとき、孤独なとき、悲しいとき、ボクはこの作品を読む。この作品を呼んでバリバリ元気が出てくるわけではないけれど、ちょっぴり頑張ろうという気になる作品。本箱の片隅に置き、くじけそうになったら読んで欲しい。
新潮文庫版よりこっちの方がオススメです ★★★★★
この「ろまん灯篭」という作品は新潮文庫でも読む事が出来ますが、私はこの角川文庫クラシックス版をオススメします。それはこの作品集には新潮文庫版には収められていない(新潮文庫版と角川文庫クラシックス版では収録作品が全く異なります)「愛と美について」という作品(新潮文庫では『新樹の言葉』に収められています)が収められているからなのです。

太宰はこの「愛と美について」で、堅物の長男、自信家の長女、俗物の次男、ナルシストの次女、幼い末弟という性格がバラバラな五人兄妹にリレー形式で物語を語らせることで小説を展開させるというスタイルを試みました。ですが、その興味深い試みもここでは上手く機能されずに終ってしまっています。そのリベンジのつもりか、太宰は「愛と美について」と同じスタイルを、同じ登場人物を使ってこの短編集の表題作「ろまん灯篭」で再び試みているのです。ここでの五人兄妹による連作には、それぞれの書き手の性格がユーモアたっぷりに反映され、一つの物語としては支離滅裂なのですが、そこに作品の面白さが生まれ、この試みの成果が出ています。そして五人兄妹を支える形で、彼らの母、祖父母が上手く機能し、作品をより面白いものにしています。

このようにこの二作には強いつながりがあり、「愛と美について」と「ろまん灯篭」をあわせて読むことで(この文庫には「愛と美について」の直後に「ろまん灯篭」が収められています。ニクイ演出です)、この「ろまん灯篭」という「隠れた名作」をより深く楽しむ事が出来ると私は思うのです。この作品集にはこの二作の他に、後に「お伽草紙」で完成を見る太宰の翻案小説のハシリと言える「女の決闘」などが収められています。