「僕」がこの女房に母親と同時に女を感じてドギマギするさまが、ユーモラスにいきいきと描写されていて、なんとも可笑しい。
他にも芥川受賞作『悪い仲間』『陰気な愉しみ』に描かれる主人公は、やはり社会的な劣等感を内に抱え込んでいるのだが、それが陰鬱にかたむかず、そのような自己を受け入れることによってユーモアに転じている。
折々読み返したくなる珠玉の短篇集。