美神と呼ばれるにふさわしい美しさを持つ阿佐子。彼女に関わった男性の目から見た阿佐子の美と、美しさ故に幸せになれない日常が淡々と語られる。
美しすぎて愛する人に信じてもらえず、最後に阿佐子が陥る悲劇。阿佐子も自分も信じられずに、愛を確かめるために最愛の人に罪を犯させ破滅していった藤夫が、むしろ痛々しい。
阿佐子自身の言葉では語られない、阿佐子の心情は読者の想像のままだが、悲しさよりも割り切れなさが残る。血の繋がらない美しい弟正実の存在も阿佐子の美しさと同様曖昧な感じ。9歳の阿佐子と出会った幸雄が、最終章で阿佐子を救うべく静かに現れるのが一筋の光のよう。