作品の中で、瞑想センターの創立者・桐山が説く宇宙観は、まさに仏教の思想そのものであり、それは量子力学にも通じる不変の真理といえる。
たとえば、「私たちが知覚する現実とは 私たちの脳によって生み出されるバーチャルである」という発言は、仏教の唯識思想そのものであるし、彼が海と比喩している深層意識は阿頼耶識に置き換えることもできる。
「ひとつの素粒子は全宇宙の状態を表現しているともいえます」
これは華厳経の「一即多多即一」という言葉と同一ととらえることができる。
作者の巧みな画力にまず圧倒されるが、それだけでなく、作者のさまざま体験や知識に裏打ちされた、哲学的にも深淵な作品である。
3巻が楽しみでならない。
前巻よりその密度を増しようにも感じる、圧倒的としか言いようがない、素晴らしい作画技術と空想力、
幻覚をここまで漫画に落とし込む事が出来る作者の技量には、ただ溜め息をつくしかない。
読むたびにその独創的な世界観に引き込まれ、コミックドラッグとでもよべばいいのか、
他の漫画にはない深遠な没入感を与えてくれる。
発巻のペースに対して物語の展開は多少もどかしいが、
この作品を読み返すたびに、作者の思うままこの作品が紡がれるならば、
次刊を待つのは苦ではない、そう感じてしまう。
名作としか評しようがない、いつまでも一人の部屋でじっくりと読み浸っていたい、
素晴らしい作品だ。