本書は、政策の起草から実現までを解説した良書である。政治学の切口では、アジェンダ（政策課題）の表出化と議論過程の説明に重きを置いている。行政学の切口では、行政職員・官僚による事業の運営過程の解説に重きを置いている。
　本書は、キーワードと参考文献が丁寧である。キーワードは、「アジェンダ」「政治的リソース」など基礎用語をあげている。参考文献には、数行の解説があり、次の本を読む際の指標となる。

本のタイトルには「政策科学」とあるが、むしろ政策過程を中心において日本の政治過程を概説した教科書である。事実についての叙述は最近の出来事までふまえており、また所々に出てくる事例も便利である。一方で学説の状況整理についてはやや古いトピックを扱っているのが欠点といえなくもないが、その中には今まで取り上げられてこなかった論点もあって興味深い。全体として現在の日本政治について書かなければならない事柄はカバーしている。