植民地支配と都市形成
★★★★★
日本に限らず、植民地支配というのはしばしば植民都市の建設を伴うものである。本書は、その都市形成史を類型化して考察することによって、都市を通じて植民地支配と近代化の諸相を明らかにしていく。その都市化プロセスや都市建築・都市計画に関する分析がコンパクトにまとめられていて、たいへん読みやすい。
もっとも、著者の専門は経済史であるので、植民地都市に暮らす人々の生活誌であるとか、植民地支配に対する倫理的是非であるとかいったものを本書に求めるとしたら、一つの手がかりにはなるとしても、基本的にはお門違いというものだろう。内容的には興味深い話が満載である本書の、その意図するところを理解したうえで読みたいところである。いまや手軽な観光旅行先である釜山やソウルが、本書を読んだ後では少し違って見えてくるかも知れない。