経済史的な植民地都市研究の論文集
★★★★☆
近代植民地都市・釜山に関する共著者の共同研究の成果をまとめたものであり、5編の研究論文からなる。
著者たちの研究アプローチは基本的に経済史のそれであり、それぞれの研究論文はそうした観点からそれぞれのテーマ・資料をもとに考察が加えられている。言葉を替えれば、本書は「近代植民地都市・釜山」を総体として描き出すものではないということである。釜山という、ある意味で朝鮮半島の近現代史を体現する都市の全体像をイメージすることを目的として本書を手に取れば、いささか肩透かしを食らうかも知れない。
つまり、本書は総論ではなく各論の研究書であり、個々の論文の内容まで見極めないと、各人にとっての参照価値はわからないのである。各論文には本文に匹敵するほどの分量の資料が収められていたりもするので、それぞれの研究テーマに関心を持つ読み手には、おそらく有益な本であると思う。