真面目さにおいて天才的な戦争経験者の著書の貴重なエッセイ
★★★★☆
自身の戦時の思い出や30数作の自作に関連したエッセイ。本書を読む限り、著者に小説家としての芸術家的非凡さは感じない一方、真面目であることに天才的で史実に基づく優れた歴史小説家としての頑固な姿勢が存分に伝わりました。氏の少年時代の思い出や価値観や自作への想い等も知ることができる貴重なエッセイです。
人柄と作風の伝わるエッセー集
★★★★☆
2006年に他界した吉村昭氏の生前最後のエッセー集。まじめな人柄が随所ににじみ出ているとともに、氏の執筆態度や史観を理解することができる。「私は、史実そのものがドラマであると考えているので、フィクションをまじえることはしない」。「この敵討は単なる私的闘争ではなく、それを書くのが歴史そのものを書くという確信を得て、小説「敵討」の筆をとった」。全編中、戦時中アメリカ情報部による電話傍受を防ぐために外交官同士で早口の鹿児島弁を用いて会話したという挿話を描く「小津映画と戦後の風景」や名作「陸奥爆沈」の後日談を描いた「浜千鳥」は、特に記憶に残った。
人柄と作風の伝わるエッセー集
★★★★☆
2006年に他界した吉村昭氏の生前最後のエッセー集。まじめな人柄が随所ににじみ出ているとともに、氏の執筆態度や史観を理解することができる。「私は、史実そのものがドラマであると考えているので、フィクションをまじえることはしない」(62頁)。「この敵討は単なる私的闘争ではなく、それを書くのが歴史そのものを書くという確信を得て、小説「敵討」の筆をとった」(76頁)。全編中、戦時中アメリカ情報部による電話傍受を防ぐために外交官同士で早口の鹿児島弁を用いて会話したという挿話を描いた「小津映画と戦後の風景」や名作「陸奥爆沈」の後日談を描く「浜千鳥」は、特に記憶に残る。
吉村昭ファンにオススメ
★★★★★
私は「破船」や「羆嵐」などの吉村氏の
本に触れ、一体どういう人物なんだろうと
興味を持ちました。
冷徹に物事を見つめ、淡々と感情を交えず
事実を読者に突きつける文章に私は驚嘆しま
した。
この本を読むとなぜここまで著者は冷静に
ものを見ることができるのか?深く物事を考
える行為をどういう過程で身につけたか?な
どが分かります。