ディズニーランドのあの機械仕掛けの人形による人気アトラクションを思い浮かべて、このサントラ盤に、「ヨーホー」の歌のような気さくささ、あるいはエロール・フリン主演『海賊ブラッド』でのコーンゴールド作曲によるオーケストラの血湧き肉踊るロマンチシズムを、ささやかながら期待される向きもあるかもしれない。けれども、作曲家クラウス・バデルトは、まず素朴で愛すべきケルト風フォークでリスナーを魅了し、ついで彼が作曲した『K-19』の不穏な音楽に勝るとも劣らないシンフォニーと合唱による轟音を浴びせかける。同じドイツ出身の作曲家の先輩からの影響(本作は、ハンス・「ロング・ジョン」・ジマーの監修による映画音楽としてお墨付きを得ている)は全編を通じて明らかだが、バデルトは彼ならではの力強い才能も持ちこんでいる。
おそらくこのありきたりのジャンルは徹底的に作り直す必要があると感じたバデルトは、うなりを上げる砲弾を思わせる音をかすかにまじえながら、カリブ海でホルストとショスタコーヴィチが一騎打ちするかのようなリズミカルで緊迫感に満ちたヨーロッパ的なセンスを聴かせてくれる。またエンディングでは、ややロマンチックな味付けをしているが、これは極めて用心深くながら、コーンゴールドの生き生きとしたメロディーの恩恵を受けているのはまちがいないはずだ。
けれども、あくまで本作の中心となるのは夏の大作映画にふさわしい堂々たる大音量の音楽であり、それは隣の住人の目を覚まさせるほどだ。(Jerry McCulley, From Amazon.com)