■本書のサブタイトルは「本の海で溺れて」。著者の南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ)氏は本名を河上進という。ユニークな筆名は、江戸時代の戯作者の名前を拝借愛用しているとの由。氏の出版界の最初の仕事は、ゆまに書房の『雑誌集成 宮武外骨此中にあり』全24巻だった(企画編集&版下貼り込み)。つまり彼は25歳くらいで編集者としていきなり頂点を極めたようなところがあるのだ。その後は『本とコンピュータ』編集部に在籍する傍ら、『彷書月刊』『sumus』『日曜研究家』などに古書や書店やミニコミについての文章を発表。本好きの人ならどこかで彼の文章に接しているのではないか。
■河上氏は99年の春に徳島県北島町に来ている。徳島入りの目的は2つあった。1つは書店業界紙「新文化」連載コラムの取材(「創世ホール通信」の紹介)、もう1つは単行本『ミニコミ魂』(晶文社)の取材(牟岐町出羽島・坂本秀童氏の『謄写技法』と小西の『ハードスタッフ』の紹介)だった。氏は小西宅に泊まって古書店回りや鳴門市ドイツ館探訪などを精力的にこなしてお帰りになった。
■本書は南陀楼綾繁氏(河上氏)の初の単行本。ミニコミや古本に関するネタが満載だ。秋田の無明舎出版発行。