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誇りと抵抗 ―権力政治を葬る道のり (集英社新書)

価格: ¥1
カテゴリ: 新書
ブランド: 集英社
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自分自身の立場が問われる ★★★★☆
「西側先進諸国のみなさんは、傷のあるマンゴーや、蚊が食った跡のあるバナナや、数匹のゾウムシが混じっている米は食べない。ところがわたしたちは、蚊が食っていようが、たまにゾウムシが顔を出そうが気にしない」。第一世界の環境基準によって豊富な作物が商品化できない一方で、WTOから輸入制限の解除を要求されるインドのことを書いた一節です。これだけでもう、野菜から虫が這い出てきたら気絶しそうになる私は、言葉を飲み込むしかありません。
 しかし、ロイが求めるのは、そうした事実に対する甘い共感や共鳴ではないでしょう。彼女が引き受けているインドの現実も現実なら、彼女が痛烈に批判する米国主導のグローバリズムの盟友として世界に位置を占める社会で、彼女が描く第三世界に映像以上の実感を持てずに私が生きているのも現実です。
 それぞれの現実とどう真摯に向き合って、問うべき不条理をどう突き詰めていくか。彼女が教えてくれるのは、現実に向かう勇気と知恵を持とうとする意志だと思います。そうして現実を問い続けることで、私たちはどこかで必ずつながり合うことができるはずです。
痛ましい背景を持ち、仮借を許さない木食虫である ★★★★★
まず最初に大まかな議論の中身について話すと、要はインド、アメリカの「不自由」に対する異議である。
だから、「誇りと抵抗―権力政治を葬る道のり」という題名だが、内容は限りなく具体的なので、抽象論を
求めている人は肩透かしを食うかもしれない。でも、この本は、たとえ求めているものでなくても読んで欲しいと思う。

インド出身の女性作家=活動家という「肩書き」で、まず、インドの非民主的な現状について抵抗を記す。
ここに記されているインドの現状は、胸を締め付けられるほどに、動悸が止まなくなるほどにひどい。
癒着、汚職、司法権の不独立、搾取、多国籍企業による侵食は考えられないほど。

ダム建設を進め、立ち退きを補償無しで不可触民や先住民に迫り、ハンガーストライキにも耳を貸さず、果ては
強制入院させる。電力は権力により横取りされ、司法は全くでたらめな罪を着せる。多国籍企業(本文中では具体名を挙げているが)
は不公平な侵入を試みている。アルンダティ=ロイの言っていることが事実だとしたら、

インドはもう初めから作り直さない限り立ち直れない。
そして、どうやら事実ではないか、との結論がおそらくこの本を読むと生じてくる…。

日本にも、よくテレビの討論番組などを見ると、妙に辛らつな意見ばかりを述べ、
戦争体験やその他の経験を振りかざし、それ自体に説得力があるかのように言う過激派の人たちがいる。

このロイも、アメリカのノーム=チョムスキーなどと同様、超がつくほどの過激派だけれども、背景にあるもののレベルが違う。
インド政府に、裁判所に、猛然と立ち向かい、投獄も恐れない。インドでは比較的福祉の進んだケララ州の生まれのようだが、
インドという特異な環境が与えたあまりに痛い背景は本物の言説を生んでいると感じた。

同じくインド出身のノーベル賞学者、アマルティア=センが、ベンガル大飢饉や差別虐待で死にゆく人々をみて、
素晴らしい論理をあくまで学術的な見地から作り上げたが、こちらは、同じ背景を持ちつつ、とにかく過激な物言いをする。
ロイはこの本の中で、「メディア=コントロール」などで自国アメリカ批判を痛烈に行うチョムスキーを、

「昼も夜も木をバリバリと噛み砕き、細かな屑にする木食虫」と表現していてあまりに適切な比喩に笑いましたが、
そういう本人も同様の強さを持っている。しかし、一方でチョムスキーが原爆投下の日に「そのことを知ると、
わたしはひとりで森の中に入り、二時間ほど過ごした」ことを記しているが、同様の考えられた、研ぎ澄まされた日本刀の

ような議論が存在している。その点で、日本刀の振りをしているだけの過激主義者とは違う。

アメリカの覇権主義に対し、「マーティン=ルーサー=キングは、どう思うか?と何度も繰り返しながら
考察(辛らつな批判)を行うのも上手なもっていき方だった。修辞は非常にうまいし、訳者の方もノリにのっている。

私は基本的に断定調の過激な物言いが嫌いで養老孟司ですら受け入れられないのだが、その数百倍過激なロイの主張に
かなり心を動かされてしまった。この本、152ページと短いのだが、本物である。