題材は9.11であるわけだが 本書はそれを超えて 現在の人間たちの到達している大きな限界を 軽やかに描き出していると考えている。「善と悪」の対立という 非常に考えやすい構図で世界を描き出すことの不毛さ、危険さ、滑稽さが 今ほどはっきりしてきた時代はないと思う。但し それがどれだけ多くの人たちに「はっきり」しているのかは 依然として大きな疑問である。
普通の会社員として毎朝6時のNHKを見て 行きの電車で日経新聞を読んでいる自分であるだけに 本書は衝撃的ではある。衝撃を受ける感受性だけは 残していかないといけないと強く自戒した。
普通の人に是非読んでみてほしい一冊である。
本書では第二次大戦後、自由と正義を掲げる世界の大国アメリカが何を他国に対して為してきたを著者が道化になって語ってくれる。しかし、その道化の素性は怒りと悲しみに満ちているように私には思える。
自爆テロと聞くと私たちは恐怖、不安、嫌悪を抱く。あってはならない行為だ。しかし、それと同時にそこまで彼らを追い込んだものがなんであったのかをもっと正確に知る必要があるのではないか。この本を読みながら痛感した。