実存主義者たち
★★★★☆
実存主義の代表者としてヤスパースやマルセルの名は必ずといっていいほど挙げられている。しかしハイデッガーやサルトルとの対比で思想が語られることはあっても、彼らに焦点が当たることは少ないように思う。
さて実存主義者たちは“今を生きる自分(実存)”について哲学・思想を構築していったが、その思想・方法論は同じ項目に押し込めてよいのかと思えるほど千差万別である。
本書にはヤスパースの『実存開明』(大著『哲学』の第2部)とマルセルの『存在と所有』の第1章「形而上学日記」(同名の著作があるが別物)が収録されている。ヤスパースは重厚な哲学を描き、マルセルは創作ノートを読んでいるような面白さがある。
「実存主義」といえばハイデッガー・サルトルが取り上げられる嫌いがあるが、本書を足がかりにヤスパースやマルセルの独自性を楽しんでほしい。