圧倒的なリアル
★★★★★
初めてこの本を読んだのは、もう20年以上前。
夏休みに行った祖父の家の本棚にあった。おそらく初版だろう。
まだ小学生だったが、たちまち引き込まれ何度も繰り返し読んだ。
まだ解らない単語や、文があったが関係なかった。テレビや映画やマンガでみる見せる戦争ではない、実体験の記録だ。
戦争体験者が語る戦争の悲惨さやみじめさではなく、
専門家の戦争論や反戦論のような押し付けがましい理屈もない、
ただ、そこでどんな事があったかのノンフィクションである。
それを非常に明晰な文章で描いている。当事小学生の私がのめり込んだのはこの高い文章力のおかげだと思う。
そして何よりこの本は人が動いている。戦記ものでありながら、戦争状況以上に人が描かれている。その言葉、そのしぐさが何よりもリアルである。
30をこえてまたこの本を読み、改めてこの本の完成度の高さを再認識した。