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サミング・アップ (岩波文庫)

価格: ¥945
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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原文読者に薦めたい翻訳 ★★★★★
この作品は原文で読みましたが、あらためてこの訳本を読むとつかめずにいた意味が新しく日本語で伝えられる喜びが味わえます。あらためて言語は生き物であるという認識に帰れる名訳なんでしょう。前半のイギリス文学の知識、モーム特有の意地の悪さ、皮肉、ときたま垣間見える意外な優しさがこの翻訳には表現されています。。
人生を静かに回想するモーム ★★★★★
モームが晩年に自身の人生を振り返り、書き綴った作品。これを読むと、彼の人となりがぐっと身近に感じられる。

話の筋は、最初は時系列だが、気の向くまま連想的に書いたという印象が強い。
形式的に「自伝」という堅苦しさは全くなく、一作家の回想録として気軽に読める。エッセイ風だ。

また、自らの経験を元に書いた、人間の絆、月と六ペンスの断片と思える箇所が至る所にちりばめられている。
先にそれらの著作を読んでからこの本にふれると、作品の出来事との違いが分かり、さらに楽しめると思う。

作家になるまでの生い立ちや、芸術論、作家論について多くのページが割かれてある。少々くどいくらいに書いてあり、時に親父の説教的に思えるが、物を書く人にとって参考になるであろう。
個人的には、哲学や宗教観についての記述が面白かった。自らを不完全な者として扱い、時間の経過とともに心の紆余曲折が手に取るように分かるようだ。

「人生に意味はない」と客観的に語りつつも、医師や作家になるためにそれなりに努力したはずである。
苦労話を軽く流すあたりは、粋を好み、生来がんこ者なのであろう。
そんな彼自身の二面性を意識しながら読むと、また新しい発見があっておもしろい。
原著へのレヴューですが ★★★★☆
とうとうsumming upまでたどり着きました。高校時代の英文和訳の問題としてこの作品からのぶつ切りがよく参考書に載っていました。私もよくここまで来たものです。昔はこのぶつ切りの和訳に本当に悩まされたものです。それもそのはずです。この作品は相当モームの作品を読みこなした後にこそ挑戦すべき作品なのです。英国の階級社会の特性やモームの作品の特徴をつかんだ後でなければ決してその魅力を味わうことはできない作品でもあります。英文は簡潔です。しかしこの簡潔さは、deceivingなものです。どこまでが本当でどこからが謙遜というか諧謔なのか、わかりにくい矛盾にとんだ作品でもあります。彼は決して自分を大言壮語する人間ではありませんが、ある部分では、明確に自分の意見を出しているところもあります。また都合が悪いときはあっさり忘れてしまったと話を止めてしまうのも彼のテクニックです。でもあの有名なテロリストであるboris savinkovは実名ででてきます。たしかに自叙伝のような形式を取っています。フランスでの幼年時代、吃音に悩まされた青年時代、第一次大戦前のデビュー、戦後の活発な世界各地への旅行、最後は第二次大戦を直前とした不安の迫る時代までがたどられます。しかし時事的な出来事はほとんど触れられることはなく、むしろ、医者見習い、脚本家、そして小説家という形での自身の人生が振り返られます、そこで繰り広げられるのは、演劇論、小説論、哲学論、宗教論と人生論です。演劇論はたしかに時代性を帯びていており、最後の人生論もその抽象性は読みにくいところもあります。しかしもっとも味わうべきは、彼の語りの特徴であり、自分なりのパターンの構築を目的とした彼の突き放した人生観でしょう。
要約するとー ★★★★★
“月と6ペンス”や“人間の絆”という名作をお読みになった方にはなんといってもこの“サミング・アップ”がお薦めです。 モームという人は、とにかく観察眼の鋭い人で、彼の作品のほとんどはその人間観察の報告書ではないのかーと言いたくなるような趣を持っているのですが、その観察眼を己自身に向けたこの本以上に、彼の内面について詳しく書かれた解説書はないと思います。 もちろん人生の指南書的に読むことも出来ますが、成功を治めた作家の歯に衣着せぬ人生エッセイとして楽しむことも出来ます。

人間とは首尾一貫したものではなく、信じられないくらいの多面体が奇跡的に一つの固体に収斂したものである、という彼の主張を裏付けするかのように、モーム自身の色んな面が垣間見られます。 思わず吹き出してしまうのは、“生まれつきの性格のせいなのか、周囲の人間から思わず一歩引いてしまう癖があり、そのため誰とも親密な関係になれない”と、岩波文庫をしじゅう読んでいるような人なら恐らく同感してしまうであろう気の弱さを見せつけたかと思うと、別な章では“私はあまり他人を尊敬しない。 だいたい世間にはこれに対する要求が多すぎるのだ”と、倣岸不遜なことを言ってのけます。 小憎らしいくらいに明晰、残酷なまでに怜悧な人生観をもっている彼ですが、“何度も恋に落ちた事はあるが、報いられた恋の至福を味わった事はこれまで一度もない”という一文には、“そりゃあ、アンタ、そんな態度じゃあ無理もないでしょうねえ”と言ってあげたくもなります。
一年に二、三度は必ず読みたくなる洒脱な本です。 英語の原文もすばらしいのですが、残念ながら原書は現在手軽に入手できない状態にあるようです。
大人の智恵を盛った名著のすぐれた全訳 ★★★★★
70歳近くになる叔父は、朱牟田夏雄先生に講習会か何かで『サミング・アップ』を教わったそうだ。英文解釈の面で学んだことも素晴らしかったが、エッセイの中味に目から鱗が落ちたという。16章と17章をガリ版で刷ったテキストだったらしい。朱牟田先生の弟子の訳者が、師の実現出来なかった全訳を完成したのだと知り、叔父に贈る前に読んでみたらすらすら読める訳なのに感心し、自分用にもう一冊購入した。私自身、大学で英語を教える身であるが、不必要に「実験的」な作品よりも、一見通俗的に見えてその実大人の智恵を盛ったモームの作品の方が、有益なのではないか、と思う。原作の味わいを活かしつつ、21世紀初頭の読者にもすっと頭に入る訳文に仕上がっている行方訳を、是非学生たちにも薦めたい。