まあ、恋の話
★★★☆☆
ああ、まあ、恋の話。
年の差10歳。
子供だと相手にしない隆司と真剣に相手をして欲しくてもがく冴。
次第に隆司が冴のことを考えるようになる過程は意外と端折られていて、あんだけ言っててまあアンタも結局冴を好きになったわけね、と冷めて読んでしまえる部分もあり。
ただ、冴のこれまで生きてきた環境から彼が感じる大人の嘘というものへの考察がすごい。
今まで散々いろんな人に不可効力だとしても振り回される形で生きてきた冴が言い当てる隆司の考えや心の中。
子供は大人を意外に観察している。
どきっとさせられるシーンが幾つかありました。
後日話「チョコレートタイム」を含め、エロはほぼなし。
冴と隆司が付き合うまで、そして付き合ってからの心の繋がり具合がメイン。
ドキドキはらはらするような高揚感はないし、隆司はどこまでも冷静というか冴よりも気持ち面で落ち着いて冷めているのは否めない。
ただそんな冷めた中でも冴のことを考えているんだなという大人の不器用な愛情表現が垣間見えるのがポイント。
おすすめ。
★★★★★
僕が松前さんの本を読んだのは、これが初めてでした。
色々買い集めていくうちに、この作家さんは年上の攻に恋い焦がれる年下受の話が多いなァと思いましたが、その中でも僕はこの話が一番好きです。
偶然貰った腕時計に背中を押されて試験に挑み、何とかもう一度逢えないかと地味に頑張り、再会後最初はイメージとの違いにがっかりするもののゆっくりデートを重ねてすぐには見え辛かった魅力に惹かれると同時に、相手の真意も分かり、更に約束の別れが近づく。
受の子が高校生な為に、相手にしてあげられる事が限られてしまう事を上手く逆手に取って綴られていく話と、それに色を付けるそれぞれのキャラクターの得手不得手。好き嫌い。
挿し絵もとても綺麗で(寧ろ最初はそこに惹かれたのですが)、表情が少ないせいか期限付きの恋の儚さみたいなものが僕にはすごく伝わって来ました。合っていると思います。
とてもお薦めなので、お財布と相談しつつ是非(笑)