本書で紹介される女の子たちのいじめときたら、陰険かつ巧妙、その威力は絶大だ。弱いところをぐさりと突き、心をずたずたにする。大人になってもその後遺症から立ち直れない被害者もいる。男の子の暴力と違って外からはわからないため、親や教師はまったく気づかない。でも実は深刻な問題なのだ。そのことを気づかせてくれる、というだけでも本書は読む価値がある。
多くの少女や成人女性への取材を通じてこの問題を調査した著者は、女の子特有の非暴力的ないじめを「裏攻撃」と呼ぶ。そして、その原因は女性の攻撃性を否定する文化にあると言う。女の子は無意識のうちに「いい子」であることを求められ、人気者になる競争を強いられる。だから人間関係を壊すことを極度に恐れ、怒りや衝突、不快感を直接表現できなくなる。そこで間接的な「裏攻撃」が登場するというわけだ。
いじめ体験に潜む被害者と加害者の心理を探りつつ、著者はいじめにあったときの対処法や親の心構えなどを親身にアドバイスしている。女の敵は女かもしれない。でも救いの手をさしのべるのもまた女なのだ。人間関係に悩む女の子とその親、教育関係者はもちろん、いじめに苦しんだ経験のある大人にも、ぜひ一読をすすめたい。(栗原紀子)