大衆民主主義前夜の市民社会における階級の浸透、日常的な目線で
語られる1848年の革命とその帰趨、市民富裕層へのキリスト教の浸透論理といったトピックとしての面白さ、没落の人となったトムの手に取られたニーチェ(世紀末思想の市民社会での断片的受容の形態)、トムとヨハンの重なり合いとトムからの社会観念からの切り離しにへの著者の秘められた哀惜、そして自らの分身であるヨハンに対する
、著者からの冷厳で一種倒錯的な甘美さすら漂う最期....。ともかく、『見事』に描かれた一大長編作品である。