大阪の人間像が旨く描かれた作品
★★★★☆
この小説は著者の作品群の中では珍しく大阪が舞台になっています。
旅情作品はやはりその地の風景や人間像が旨く描かれていなくては味がありません。この作品では特に大阪の人間像が旨く描かれていると思います。
浅見光彦と大阪の刑事のやり取りなどに風情や特長が表れていますね。
事件は年に一度の<御堂筋パレード>で起きます。
ある特許を基に社運を掛けた繊維メーカー・コスモレーヨンが繰り出したフロートから、その女神に扮していたモデルが突如転落し、急死してしまいます。
単なる事故なのかと思われたモデルの遺体からは毒物が検出され、そこに居合わせていた浅見共々が大騒ぎに。
そしてさらなる殺人事件が御堂筋界隈で発生し、その事件と後に起きる三度の殺人事件が絡み合って、物語は複雑な方向に進んでいきます。
最後に書かれているエピローグを読まなければこの事件の真相は分からないのですが、只残念に思えるのは物語の中で謎となっていた部分が全部解明されてない点があることです。
また、この作品の主人公でもある畑中有紀子をもう少し前面に出して欲しかったですね。特に同じモデル仲間同士の人間関係を見据えた上で、事件解決の道のりの中にこの畑中有紀子の活躍ぶりを取り入れても良かったと思います。