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ブラック・ダリア (文春文庫)

価格: ¥770
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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エルロイの入り口 ★★★★★
この本はエルロイのLA4部作の第1作だ。エルロイは甘えのない文章でぐいぐい読者を引っ張ってゆく。とにかくカッコイイね。事件のラストでは衝撃を受けるだろう。ここには祈りがあり真実がある。エルロイは全部読んでるけどまずはブラックダリアが出発点だね。ここから4部作を一気に読んで欲しいね。人生は戦争だと考えるとエルロイのように甘えと妥協のない文章に接するとリアリティと迫力を感じ心が震えるね。スカスカ本が多い中でこのエルロイのパワーとハートには脱帽だ。この人は天才だよ。
暗黒面を取り上げ過ぎ ★★★★☆
本作を読んだのは5年以上前の事。これ程の話題作になるとは思わなかった。想像するに話題の原因は本作がLA暗黒4部作の第1作とされ暗黒面が(出版社によって?)強調されている事、物語が実際にロス空港の近くの空き地で起きた猟奇殺人(被害者の呼称がブラック・ダリア)をモデルにしている事、作者の母親が殺人の被害者になり、それが作品に反映されていると想像される事、デ・パルマ監督による映画化がされる事あたりか。

しかし、本作は「東電OL殺人事件」、「世田谷一家殺人事件」のように作品中でモデルとなった事件の核心に迫ろうとする意図はなく、主人公の黒人刑事を中心とした当時のロスの雰囲気を描こうとしたものである。実際、事件は未解決のまま終る。作者に猟奇趣味はない。戦勝後のロスの自由ではあるが退廃的なムードは良く描かれているし、人種差別やドラッグ等も当然のように描かれる。そうした雰囲気をダークと感じる人にはそれで良いと思うが、暗黒面だけがエルロイの持ち味ではない。

主人公の黒人刑事は、人種差別の壁もあって屈折した行動を取るが、次第に事件にのめり込んで行く。本作は主人公のある種の精神的成長物語とも取れる。その他の人物・背景に関する書き込みも多いので、色々な受け止め方ができると思う。ブラック・ダリアをモチーフに、当時のロスの人間模様を描いた秀作。
消費社会の暗黒 ★★★★★
トラウマを抱えた者たちが互いに引かれあい、暗黒の彼方へと誘われていく。身も心も切り刻んでいく行為だとわかりつつも、そこにしか活路を見出しえない人間の群像劇。暗黒小説を定義するとしたらこんな感じだろうか。戦後の好景気と帰還兵で沸く47年のロサンゼルス、更地から大量消費社会―文化をつくりあげ繁栄を謳歌するロサンゼルス。この作品ではそうした貌は一切出ない。あるのは暗黒。地縁血縁ではなく平面的で無機質な空間のなかで、人種的民族的思想的性的憎悪が浮き彫りにされ、倫理や正義感ではなくひたすら欲望だけが事態を前へ前へと進めていく。ある者の誰かに対して「良からん」とする作為が、悪意と裏切りの連鎖を構築していく。すべての愛憎が「ダリア」につながること、もうひとつは主人公が「安定」していること、この二つを軸に、「参加者」たちのトラウマが暴かれ碾き臼にかけられるように粉々にされていく。
エルロイはコンサバティブであり(かなり変わってはいるが)、本書は特に人種問題について「配慮」がなく描写があけすけである。だがその分、人や社会の劣情を臓物に手をいれるようにして引き摺り出してさらけだす。いわゆるリベラルの「きれいごと」に陥らない一方で、「悪」をも併呑するはずの保守の側ももてあましてしまうような、稀有の魅力がある。
ハリウッド・バビロン 夢魔は現実となり、そしてまた夢魔の小説へ(映画公開間近) ★★★★★
 私の友人に推理小説評論も手がける文筆家がいます。その彼が「あなたの好みにぴったりなのはこの人だ」と薦めてくれたのがJ.エルロイです。それ以来長大な彼の作品群をコツコツと読み進めて幾年、「もの凄いもの」を常に求めている私の好みにやっぱり合っていたのは、流石に我が友人は慧眼でした。
 J.エルロイ作品は過剰・強烈な筆致、ねじ曲がって混濁に満ちたプロット、妄執とある種の諦念に支配された人物達、といった特徴がありますが、不思議なことにいずれも読後感が爽やかなのです。もしくは哀切な情感が吹き荒ぶとでもいいましょうか、比定するならペキンパー映画の傑作群の感触に近いものがあります。暴力もセックスも空虚な心を満たしてはくれない。しかし瞬間的な歓喜に自らをごまかすかのように、やはり暴力やセックスに手を染めるしかない、その虚しさ、哀しさ。ただしハードボイルドのようにドライではありません。情念がほとばしっています。
 表題の“ブラック・ダリア”は『ハリウッド・バビロン2』でも有名になった猟奇死体の当事者についていたニックネームです。いまだ未解決なこの事件ですが、全貌が『ブラックダリアの真実』で明らかにされようとしています。他の識者の方も指摘している通り、この事件は事実の方がもの凄いです。しかしそれは我々に根源的な驚異を与えてはくれますが、エモーショナルなものは稀薄です。母の惨殺に懊悩し、そしていつしか母と“ブラック・ダリア”を同一視していたJ.エルロイの業の深さを追体験し、悪徳と強欲蠢く精神的荒野の中で生きていくカタルシスにも似た感慨をこの傑作から受け取ってください。
 肝心の本編の紹介が出来ませんでしたが、まあそれは読んでみて。今週末、いよいよデ・パルマ監督による映画が公開ですね。どんな味付けをしている事やら。40年代ノワールの名作を意識した構成で、映画ファンを狂喜させてくれることを期待しています。
エルロイ入門に最適です。 ★★★★★
常に現代ミステリー・ハードボイルドのジャンルの中で高評価を得てきた作品であり、終に映画化までされエルロイが再評価されてきている事を嬉しく思い且つ今後もあらたなる読者層が本作によって広がる事を願います。

4部作中、3作目と4作目こそ人物・事件性こそ連鎖してはいるが、本作はLA4部作の第一作目であり、且つ独立した作品として完結もしているので安心して本作から入り込んでいいと思います。

文体もエルロイ未読の方にも一番入り込み易く且つシンプルな筋立てになっています。
しかし、ハードボイルドにカテゴライズされるとはいえ、チャンドラー、マクドナルドとは全く作風は違いどちらかと言えばR・スタークを更に暴力的にした作品です。

本作に毒された方は、以降の「ビック・ノー〜」「LAコンフィ〜」「ホワイト〜」を順次手に取って頂きたいし、何より「アメリカンタブロイド」を読んで頂きたい。

また、過去の「レクイエム」「血まみれの月」も佳作なので是非。