Fireflies
価格: ¥1,076
『Fireflies』以上に分裂気味のアルバムを想像することは難しいが、ミシシッピの誇るスター、フェイス・ヒルはさまざまな技法でリスナーを喜ばせることができる。ロサンジェルスの不摂生について怒りを示したカントリーの曲を収録した2002年の『Cry』は、これまでに作られたポップ・アルバムの中でも破壊的だった。それからクラブ・ミュージックで攻めたが、実際は音楽的には『Cry』と大差なくプラスアルファが求められたアルバムもあった。ここにきてようやくヒルは彼女自身となり、最後のアルバムで受けた酷評をいまだ引きずりながら、生まれ変わった自分を証明する必要が明らかにあるようで、自分の変化を示すために髪をブルネットにしている。
『Fireflies』に関する悪いニュースは、カントリーの曲すべて――事実上『Cry』のことで許しを請う自伝的な「Mississippi Girl」、できちゃった結婚を歌ったホーダウンでアニメ的な「Dearly Beloved」――などが、困惑するような試みである点だ。ディキシー化したこの歌姫が自分の生い立ち以上のものは身につけることができないと示す結果になっている。さらに他の2曲、ダレル・スコットの説教じみたプロテスト・ナンバー「We've Got Nothing But Love to Prove」や美しく輝くバラード「Pari」の両方は叙情的で頭をかきむしりたくなり、ヒルが何者でどうなりたいのかを模索している姿が浮かびあがる。変革フォークのローリ・マッケナによる複雑で洗練された3曲、夢の力を歌ったアルバム・タイトル曲、人生の選択を再評価する「Stealing Kisses」、中毒患者との生活を歌った「If You Ask」では歌い方を変える方法を熟知したところを見せている。ヒルは「Mississippi Girl」で伝えられる以上のことを伝えたいともがき、やっと蛇口をひねり始めたばかりの感情の貯水場を目指している。このアルバムには、彼女がいくたびもそこに戻りたいと願っている希望がある。(Alanna Nash, Amazon.com)