本書の主旨とずれていることは承知で
★★★★☆
前著の存在も、著者のお名前も、まったく知らずに、図書館で本書を手に取りました。
著者がどれだけネット上で叩かれたか、私はまったくといっていいほど、知りません。
その叩きに加担することになるかもしれないし、また本書の主旨とずれていることは承知で、書かせてもらいます。
「いかにも広告代理店的」(大意)という批判だけは、的を突いていると思いました。
もちろん、自分への批判を著書に載せた著者の度量の大きさは、素直に認めます。
その上で書きますが、テレビは、それを観ている者に、どれほど同じ夢を共有させているのでしょうか?
おそらく、どんなに白けた作り手や「広告代理店」の人が思うほども、共有させていないと私は考えます。
統計は取れはしないと思いますから、決めつけだといわれればそれまでですが、ある程度共有できているとでも考えないと(おそらくはそれなりの)ハードワークをこなせないと思うので。
では、ネットが同じ夢を共有させているかというと、もちろんそんなことはない。
本書でもあげられている匿名掲示板等々の衝突は、私も少しは知っています。
しかし、ある観点に立てば、まったく同じとまではいかぬまでも、似た悪夢を共有することに「成功」してはいないでしょうか?
誤解のまま共有しない夢を持つ幻想を持ち続ける社会と、たとえ悪夢でもより共有できている社会とでは、どちらがましでしょうか?
私は、この判断は「趣味」の問題だと考えます。
どうも私と同じ世代のようですので、世代にこだわるところのある私は、ここにこのようなことを書かせていただきました。
自分の専門分野という点もあるでしょうが、しっかりした問題意識と時代感覚ををお持ちの方だと感じました。
ただこれは、著者が届けたい所へ届けたい形では届かないだろうな、と思いました。
引用は正確にしろ? まったくその通りです。
やはり(図書館で読むのではなく)購入すべきでしょうか。
前作を読んでいれば要らない
★☆☆☆☆
前作、ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)の内容と主張はほぼ変わりません。
作者の主張にはご説ごもっともとある程度納得できますが、前作の方が俯瞰視点として上手くまとめられており、
前作から特に発展しているわけでもない、ほぼ同じ主張の本を購入し、時間を割いて読んだことは無駄思え、失望感を味わいました。
どちらか1冊であれば、『ウェブはバカと暇人のもの』をお勧めします。
この本の視点を持っておくことは必要
★★★★★
筆者はネットで飯を食っている人であり、その意味では「天に唾している」違和感を感じないではない。
ただし、ネットが強力なツールであることを認めた上で、我々一般人に対しネット内での風潮や世論に踊らされるなかれと説く筆者の主張には極めて説得力がある。
ただ、132ページからの「衝撃的な梅田望夫氏の『残念』発言」を読んでいて、もしかしたら、筆者が言っている「今ウェブは・・・」とは、「今、『日本』のウェブは・・・」という可能性もあるのではないか、とは思った。この点は今後英語で書かれたログ等を読んで確認していくしかないだろう(私は仕事柄英語で書かれたウェブ上の情報をよく読むが、純粋に情報収集にしか使ったことがないので)。
他の評者が言うように、タイトルは各章の表題がやや扇情的な部分があるし、若干無駄かなと思われるコメントはあるものの、こういったマイナス面を差し引いても筆者のメッセージは傾聴に値する。Twitterに踊りかかっている人々には是非一読を進めたい(私はTwitterを実験的に使い始めている)。
そんな結論では、だれも救われない
★★★☆☆
出版界やウェブ論壇にて密かに全体主義化していた「ネット万能論」に対し、
真っ正面から批判を加えスマッシュヒットを飛ばした『ウェブはバカと暇人の
もの』。本書はその著者による「反ネット万能論」の続編的内容だ。
しかし残念ながら、この続編にはあまり感銘をうけなかった。というのも、言っ
ていることはほとんど前作の域を出ないし、後述する「結論」の部分もあまり
にもナイーブ。ちっちゃい男と思われるだろうが、タイトルも正しくない。この本を
読んでみると日本のネットは「退化中」というよりもずっと同じ、「低空飛行」な
のだ。
ウェブは便利であるが魔法の道具ではないし、大多数のバカと暇人が居座っ
ている場所だ。「夢」ばかりがとりざたされ、その「実」の部分が語られないと
いうのが、前著から連綿とつづく彼の主張であり、批判しようとしているのは、
ネットを無批判に「すごい」「楽しい」とする声なのだ。
しかし、この本を読みながら思ったのだけれど、「すごい」かどうかはさておく
として、暇つぶしとしての「楽しい」の感情さえも否定するのはどうだろうか。
別にあるユーザーが、例えば上地雄輔のブログにくだらないコメントを書いて
「楽しい」と実感するのは、僕自身確かにくだらないとは思うが、個人の健全
な「楽しい」としてそれはそれでほっといてあげてもいいんじゃないか。
それに、著者の論考は「ではなぜネットに「バカと暇人」が大挙して押し寄せ
ているのか」という状況分析の方には、いっこうに進まない。そりゃ国立大か
ら某広告代理店に入り、そこでできた話のわかる愉快な友人たちとの充実し
た日々すごしている人には、「リアルを大切にしろ」で言葉を結べるのだろう
けれど、それでは「バカと暇人」は救えない。そんな結論、あまりに建設的で
なさすぎる。
前作のようなインパクトはないけど面白い読み物
★★★★☆
前作の『ウェブはバカと暇人のもの』の続編という感じ。
前作のコンセプトを引き継いでネット上の「バカ」をさらしまくるが、本書としてはとくに新しい切り口があるわけではないので、もうちょっと拡散した「雑文」という感じがしないでもないが、面白く読めた(人によっては口の悪さにうえっとなるかも)。
「ツイッターという大発明が今度こそ世界を変えるのだ」みたいな本より、クラウドって別に言い方の問題じゃね? ツイッターは世界を変えるって、前も似たようなこと言ってなかったっけ? で、結局なんとなく消えていったよね? みたいな本作のノリのほうが実感として共感できる。
それと思ったのは、著者は2ちゃんのウィットに富んだ(?)かけあいみたいなのは好きなようだ。
たしかにくだらないけど、思わず感心してしまうような独特のやりとりは2ちゃんならではという感じはする。
あと、ドラクエ3の長所を列挙しているところは、急に熱くて笑った。