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欲望する脳 (集英社新書 418G)

価格: ¥735
カテゴリ: 新書
ブランド: 集英社
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子供がいたとして、大きくなったら読ませたい本 ★★★★☆
 
 生命の本質である「欲望」のさまざまな表出と、それに付随する倫理観や人生哲学を読み解いた本書。偉大な思想家や経済学、数学者、芸術家、科学者などの言葉や人生観を引 用し、パーソナルな見地から、欲望の本質へと迫る。
 
(「脳科学者」が書いている本だから、例えば「●●の状況下ではどれくらいの量のドーパミンが放出されて云々…」といったような内容を期待されるかもしれませんが、そのような本ではなかったです)

 「欲望」をテーマに理論を展開していくが、その過程において、現代社会の特異性や、それが内包する問題についても言及する。それらの文章は、現代社会を生きる一員としてドキリとさせられるものがある。
 「現代日本人の多くは、実際、質の良い‘学習依存症’のもたらす喜びを忘れてしまっているのではないか」「現代人の魂は、複製可能、バックアップ可能なデジタルの世界にすっかり侵されて、人生においていまだに存在する一回性に対する感覚が麻痺しているきらいがある」などなど。

「科学技術の発達により、人間は次第に自分の望むものをほとんど手に入れられるようになってきた。とりわけ、衣食住といった生存のために必要な最低限の条件は、ほぼ満たされるようになってきた。(中略)どれほど社会の富が増し、物質的には贅沢が可能になったとしても、人間の欲望には、原理的に予定調和ではいかない側面がある。それはすなわち、人間関係に関する欲望である。」
 容易に充足される欲望が氾濫する現代において、欠如しているものは何か、危惧すべきことは何か。自分が今いる社会をフラットな視点で見つめなおし、これからの人生をどのように構築していくのか。考えさせられる本。


心、意志の力を考えなおす ★★★★☆
脳の機能、人の意思などについて考えてくて購入通読
読んでみると、意識、欲望、夢、自我などにたいしての随筆的な作品となっている。心を考えないことにおいて発達してきた現代科学への警鐘、サイバー世界での心の在り方、多重文脈者としての生き方など非常に面白い。また、一回性の原理についても自分のなかでとてもしっくりときました。無知の知を目指す上で一回性の知の価値をわすれないことは大事だと思う。
色々な角度から『心』をいうものと向き合おうとする著者の気持ちが伝わってくる書籍になっていると思います。
脳科学の話はなし、エッセー本としては凡庸! ★☆☆☆☆
人間が自らの欲望を肯定し、解放することで発展してきた現代文明。大きな物語は消滅し、社会の『個別化』は加速する。そんな中にあって、ふと、論語の『70にして心の欲する所に従って、矩を超えず』との孔子の崇高な境地に感銘を受け、茂木氏が雑駁な所見を集英社のPR誌に24回にわたって連載したものをまとめたもの。

脳科学の第一線の科学者が欲望について語るということで、私たちをとりまく様々な社会現象や人間存在の本質が『脳』というキーワードを用い解き明かされると期待したが、全くの期待外れ。政治家が『美しい日本』を郷愁を持って語るようなレベルで、脳科学者が論語の『倫理感』を語ったらおしまいでしょう。

氏は、『体系的な知識や、論理的な筋道、イデオロギー、価値の序列などとは無関係に、自分の欲望を無条件に肯定し、それを他人に対して表出することをためらわない』時代の傾向を『野獣化』と呼んで批判しているが、本書そのものが『野獣化』本のようで皮肉としか言いようがない。

脳科学を離れ、欲望や倫理を考察するのであれば、先ずは、プラトンの『饗宴』やスピノザの『エチカ』を再読した方が間違いなくためになりそう。

脳科学からの考証はなく、結局そうなっちゃったか、という内容 ★★☆☆☆
『ひらめき脳』の茂木健一郎氏のエッセイ集。欲望する脳というタイトルで連載されたエッセイ24話分を収載している。各章が10ページ程度であり、仕事の合間などに読むことが可能。

全体を通しての第一感は、非常にわかりづらい、であった。理由は3点。『表現がまわりくどい』『構成が下手』『科学的な考証がほとんどない』である。本書を購入する読者が期待するのは、欲望する脳を科学的にとらえることではないかと思う。ところが、本書では雑学的な一般知識を著者の主観で解説しただけの思想書のような内容に終止しており、それらを科学的にとらえている部分がほとんどない。肝腎の科学的な部分については『まだ明らかでない』の一点張りで、結局行き着いた結論も使い古された言葉でくくられている。著者が曖昧にした部分についても研究は進んでおり、他の書と比較しても著者の勉強不足が露呈している。持ち出している一般知識もウェブサイトで簡単に検索できる情報量より少なく、連載上の字数制限を考慮しても、一冊の書として世に出すからには引用文献やわかりづらい語に注釈をつける配慮が必要と思う。本書に記載されている部分の客観性が曖昧であるのに反して、『客観的な批判基準に準拠せずに、延々と自分語りを続ける人たちにはうんざりさせられる』とあるが、この記載はそのまま本書にあてはまってしまうように思えてならない。さらには、情報量を単純な2進法でくくる考えや嗜好の変化などの記載を見る限り、脳科学についての基本知識が不足しているように思う。『ひらめき脳』『脳を活かす勉強法』と本書の3冊を読んだが、どれも科学的には鵜呑みにできなく、著者が自称する脳科学者の称号に疑問をもたざるをえなかった

本書を読んでもタイトルから期待される結論は得られない。単なる教訓集としても他に多くの良書があるし、脳科学としても推奨する内容ではない。一概に悪書とは言えないが、他人へのお勧め度は低く、星2つとした。
答えが何も書いていない。 ★★★☆☆
正直、期待はずれでした。知りたいことの答えが何も書いていない。
冒頭に、この本を書いた動機は、孔子の「七十にして心の欲する
所に従って、矩を超えず」という言葉にあったと書いています。

当然、読者としては、どのようにしてその域に達することができる
のか、いずれ解が出てくるに違いないと読み続けると、あとがきに、
「利己と利他のバランスをとることはとても難しい」と書いてある。

問題設定をしておいて、最後まで読者をひっぱって、この問題は難
しいんですよというのが答えじゃ、あんまりじゃないですか?

あくまで、日々思っていることを書き連ねた随想、エッセイという
ふうに思って読まないと、裏切られた気になりますので、要注意。