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シャーロック・ホームズの事件簿 (新潮文庫)

価格: ¥620
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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悪くないです ★★★★☆
前巻末、”最後の挨拶”で文字通りシリーズを打ち止めにしたはずのドイルですが、
熱狂的な読者のラブコールに応えてしぶしぶ書き続けたホームズシリーズ最後の一冊です。
ちょっと驚きなのですが、ホームズ・シリーズは昭和初期まで書き続けられていたことがわかります。
日本ではすでに江戸川乱歩が全盛期に入っていた頃だと思うのですがー。贅沢な時代だったのですね。

単純ではありますが、新しいトリックを考案した“ソア橋”(現在では”トール橋”が正しい訳だそうです)、オカルト色の強い”サセックスの吸血鬼”、SF性のある”這う男”、モリアーティ教授に次ぐ悪役ともいえるグルーナ男爵がホームズを痛い目にあわせる“高名の依頼人”、推理よりもなにか人生の重みを感じさせるストーリー、”覆面の下宿人”などは、子供の頃読んで、かなり強烈な印象を受けたことを今でも覚えています。 
一般的には、後期になればなるほど徐々に面白みが薄れていくといわれるホームズ・シリーズですが、なかなかどうしてバラエティ豊かな作品集ではないかと私には思えます。 
少なくとも”最後の挨拶”よりもクオリティは上がっているのではないか、と思えますし、お薦めです。
短編集 ★★★★★
短編集を事件簿(The Case-Book)という標題で作成している。
「高名な依頼人」は、結末があっけなかった。
「白面の兵士」では、語りはホームズ自身であった。
この話の中で、ワトソンが結婚した頃が、他の話の年とかみあわないらしい。

これらのことから、必ずしも計画的に書いたものではないものを集めたものかもしれない。

コナンドイルの筋の展開の面白さは、保っている。
本シリーズ最後から二番目の、最後の短編集 ★★★★☆
ドイルの「ホームズもの」最後の短編集であるが、この文庫シリーズでは各短編集から一部ずつがカットされて、最後に「シャーロック・ホームズの叡智」としてもう一冊編まれているから、あと一冊あることになる。どうしてこういう冒涜的なことをしたのかわからない。昔の文庫は厚く作れなかった、ということか。改版のときに正常の形に戻すべきだったと思う。

この作品集には元来12編が収められていた由である。これまで同様、発表誌は米国「ストランド」であるが、これまでと異なる点は、収録順が発表順と異なっていることである。1921年から1927年にかけて散発的に発表された作品を、どういう規則で並べ替えたのか、訳者はわからないと言っている。この作品では、ワトソンの語り(ワ)によるいつものパターンだけではなく、ホームズ自身の語り(ホ)による作品、あるいは三人称での作品(3)が混じっており、収録順に書くなら、ワ、ホ、3、ワ、ワ、ワ、ワ、ワ、ホ、ワ、(ワ、ワ)となる(括弧内は本書で割愛された作品「ショスコム荘」「隠居絵具屋」)。また内容面では、最初の4作品はどちらかといえば推理色の希薄な冒険読み物、次の3作が本格推理と呼べる作品(この作品集の白眉は「サセックスの吸血鬼」と思う)、そしてあとの3作品は「動物つながり」と思われる(割愛された2作品は未読)。もしこれらが収録順に関係するのなら、作品の質を低、高、低、と置いたことになるが、恐らく穿ち過ぎだろう。

「一体何をしているのか」と呆れるような凡作や読者の推理が成立しない反則作品を含む作品集である。ドイルの構成力、ストーリーテラーとしての能力は初期作品に比べてずいぶん上がったと思うが、これほど質がまちまちになると、ふつうの読者には推薦しがたい。ここに至って、もはや対象読者はシャーロッキアンたちに絞られていたのかもしれない。
ミステリ史に残る名トリック ★★★★★
◆「ソア・ブリッジ」

  大富豪にして米国上院議員でもあるギブスンの妻、
  マリーアの死体がソア橋で発見された。

  死体は、住みこみの家庭教師・ダンバーからの呼び出しの手紙を
  握り締めており、凶器と思しき拳銃もダンバーのたんすから発見された。

  はたしてダンバーがマリーアを殺害したのか……?


  ソア橋の欄干が欠けていたことから犯人が
  仕掛けた銃のトリックを見破ったホームズ。

  単純なトリックではあるものの、犯人の特異にして切実な動機と捨て身の
  行為が合わさることで、常識では測れない不可能状況を現出させています。



◆「三人のガリデブ」

  大富豪の莫大な遺産を相続するため、自分を含め、「ガリデブ」
  という珍しい性を持つ男を三人、集めようとする弁護士の話。


  ホームズが早々に弁護士の話を嘘と見抜くため、ホワイダニットが焦点となります。

  中盤以降、物語はほのぼのした雰囲気から一転、シリアスな展開に転調していき、
  クライマックスの活劇まで間然するところがありません。

  負傷したワトソンを本気で気遣うレアなホームズの姿も描かれ、
  その筋の人には堪らないかもw



◆「隠居した画材屋」

  隠居した画材屋のアンバリーは、若い妻と友人のアーネスト医師
  によって、ほぼ全財産を持ち逃げされた、と訴える。

  ホームズの代わりにワトスンが捜査を始めるのだが……。


  盗難事件直後にも関わらず、なぜか家のなかのペンキ塗りをしているアンバリー、
  彼の家のそばでワトスンが出会った、背が高くて色の浅黒い軍人のような男、
  そして、アンバリーが持っていた事件当夜の劇場の切符――。

  集められた情報から真相を見破ったホームズは、犯人をはめるために罠を仕掛けます。
ホームズの推理の切れ味,老いてもなお健在! ★★★★★
コナン・ドイルによる最後のホームズ短編集。
ホームズ物といえば語り手はおなじみワトスン博士…というのは有名ですが,この短編集についてはちょっと当てはまらないところもあります。この『事件簿』にはシャーロック・ホームズ本人の語りによる作品が登場するなど,これまでとはちょっと違った雰囲気のホームズ作品が登場します。

これらの作品が書かれた当時ドイルは晩年であり,それまで長短編多くのホームズ物が登場してきていましたが,さらに新たに巧みなトリックを考えついたということは流石というところでしょう。

もしホームズ物をまだ読んだことがないならば,『緋色の研究』から発表順に読んでみると,ホームズ自身,ホームズとワトスン博士の親交,そしてイギリス社会の移り変わりかたなどが話の随所に見られて面白いかと思います。