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ダブリン市民 (新潮文庫)

価格: ¥620
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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悲しいことに ★★☆☆☆
 この小説の魅力が、訳のせいなのか自分のセンスのなさのせいなのか、さっぱりわかりませんでした。単に相性の問題なのかもしれないのですが。かなりの文学的能力が要求される「玄人受けする」作品なのかもしれません。
 かくいうわたくし、他の有名作では、「ライ麦畑でつかまえて」とか「異邦人」とかにピンとこなかったくちで、リアリズム小説が好きなようです。なので、「若い芸術家の肖像」のレビューにも書きましたが、あまりこのレビューにはこだわらずに読んで頂きたいです。
愛すべきダブリン市民 ★★★★☆
ジョイスの処女短編集。難解な小説ばかり書いたジョイスでも、これだけは普通に読める。登場人物たちは変人だったり、飲んだくれだったり、いい加減なやつだったりする。でもそういう所が魅力の愛すべきダブリン市民たちの話。
自分をいとわしく思うことの密かな快感 ★★★★★
 短編集です。特定の地域の特定の時代の風俗,気分を前面に出しているので,それが気になると違和感があるかもしれません。それぞれの話は,直接には相互になんの関連もないものですが,読み進めていくうちに,どこかで見たようなシチュエーション,前にも出てきたような人物がちらほらと見受けられました。もしかしたら,本当はとても細かくそうしたカラクリを張り巡らせてあるのかもしれません。
 ひとつひとつの話はバラバラですが,全編を通じて感じたのは,自分が世界の中心から外れていて,常にその辺境から世界の中心を見つめている,という雰囲気でした。そのまなざしは,憧れとそして劣等感とに満ちており,読んでいて次第に惨めな気持ちになってきました。

 最後の一編では,その劣等感と!の長い格闘のあげくに,ようやくそれをうまく飼いならすことが出来たと解放感に胸を張った次の瞬間,実はその惨めさから一歩も逃れていなかった自分を見出して底無し沼のような無力感に沈んでしまいます。

 読んでいて決して楽しい本ではないのですが,どういうわけか不快な思いはなく,もう一度読み返してみたい思いが残りました。