まず、共感の念を持つながら、黙ってクライアントの話を聞こう
★★★★☆
信頼されるアドバイザーへのハウツー本。コンサルタントだけでなく、専門家として
専門知識と信用を売る商売(建築家、弁理士、技術者、等々)をしている方みなさん
全般向けです。
出発点として、『相手は自分が考えているほど自分を信頼しておらず、自分も相手を
信頼できるかという点に疑問を抱いている』という認識に立つことが肝要と説きます。
その上での心がけるべきポイントを丁寧に解説してくれます。
記憶に強く残った要点は以下の通り。
1) クライアントとの対話時
- 自分の話をする前にクライアントの話をするようにする。まず相手の見解を聞き取ることに集中する。相手の話を相手の話し方で話させる。少なくても聞いているうちは相手の立場に立つ。
- クライアントが感じていることに注意を払う。
- 問題の明確化及び解決に対して継続的に注意を払うことが、テクニックやコンテンツに精通していることより重要であることを確信する。
2) 業務開始する際、最初に考えるべき事項
- クライアントに支配的な個人的な動機は何か?
- クライアントのパーソナリティはどのようなものか?
- 組織の状態がどのようにクライアントのものの見方に影響するか?
3) 関係構築の原則。
- まずこちらから動く。
- 手助けが必要なときはきちんと頼む。
- 感謝を示す。
- 危険側のリスクは過大評価しない。
4) 知らないことを聞く時や意見を言う時のお役立ちフレーズ
- 「おそらく昨晩資料を読んでいなかったのは私だけだと思いますが」
- 「たぶん私だけだと思いますが」
- 「少しの間私が注意を払わなかったに違いないのですが」
『信頼してくれない』と嘆くのではなく、クライアントの信頼を得るため、まず自分
から働きかけること、そしてそのポイントを再認識できました。日々最前線で悩んで
いる、実務者向けの本です。
『クライアントはどう感じているのだろうか?』
翻訳の問題でしょうか?
★★☆☆☆
見出しを含めたセンテンスが非常に長く内容が頭に入りにくいです。
他レビュアーのレビューを見る限り良い本なのだろうとは思うのですが、
"解読"にパワーが必要で内容理解に時間が掛かりすぎてしまうのが残念です。
一通り読んだ感想は「辛かった」でしかありません。
原著は良い本ですが、翻訳は読みにくく疲れます
★★★☆☆
原著はすべてのセンテンスに下線を引きたい本です。有用な情報が詰まっています。一方、この翻訳は読みやすくありません。読んで疲れる文体です。以下、原著と翻訳の感想を書きます。
〔原著について〕
著者のDavid Maisterを知ったのはManaging The Professional Service Firmからです。よくある学者の机上の理論ではなく、よくあるコンサルタントの針小棒大でもなく、現実に通じる確かな方法を専門家ならではの視点で書いているところが信頼できるなと思いました。
この本も理想論に走らず、現実に通用する、顧客から信頼を得る方法を述べています。以前読んだClients for Life(翻訳は『選ばれるプロフェッショナル』)が、理想の顧客を仮定しあくまでも自分の信念を貫き通すという、やや現実離れした方法に感じられたのに対して、非常に対照的です。
今まで著者の本はこの本の他に上に挙げたManaging The Professional Service FirmとTrue Professionalismとを読みましたが、どれも外れがありませんでした。普通コンサルタントの書いた本は自身のマーケティングが主目的で肝心のことは詳しく書いていないのですが、この著者の本はそんなことがありません。お勧めです。
以上、原著のThe Trusted Advisorの感想です。
〔翻訳について〕
この本と原著を比較してみました。みなさんの言うように、この翻訳は読みにくく疲れます。原因の一つは無駄な言葉が多いことです。もう一つは英文解釈の試験の模範回答みたいな、修飾関係を忠実になぞった読みにくい文体です。
無駄な言葉の例は、たとえば、第1章の最初のページです。
第1行目 まずはある質問から話を始めよう。
原文 Let's start with a question.
対案 質問から始めよう。
注釈 原著にない「まずは」と「話を」が加わっています。「ある」も不要です。
第5行目 アドバイザーであるあなたのアドバイスを求めてくる。
原文 Reach for your advice.
対案 助言を求めてくる。
注釈 原著にない「アドバイザーである」が加わっています。「あなたの」も不要です。
無駄な情報が増えると読者に負担がかかります。読者は読んだ単語の情報を一時的に「記憶」しておき、その後に読んだ単語と「比較」します。この「記憶」と「比較」の作業が負担になるのです。
修飾関係を忠実になぞるというのは、名詞や動詞の前に修飾語を延々と続けることです。
原文が、
主語+動詞+目的語+目的語の修飾+動詞の修飾
の語順だとします。直訳は
主語+目的語の修飾+目的語+動詞の修飾+動詞
になります。これでは読みにくいので、普通は語順を調整したり文を分けたりするのですが、この本の翻訳はこのままの語順です。
重要な情報は、次の重要な情報まで覚えていないとなりません。この翻訳はその時間が長いのです。その上その間に処理すべき修飾語には無駄な情報が入っています。これは読者にかなりの緊張を強います。
この翻訳は無駄な単語が多い上に、長い修飾語が途中に挟まる受験英語風の文体です。読むのが疲れます。せっかくの良書がもったいないと思います。
読者の信頼に応えていない翻訳
★★☆☆☆
本書の多くの部分において、自動翻訳機の文章を読んでいる感じがして、非常に読みにくかったです。読みながら、「原書ではこういう言い回しをしているんだろうな。」と感じることが多かったです。我慢しながら読み続けましたが、P195の「クライアントは私に対して非常に不公平だと思います。私は彼が個人的に保証する自由な対話というのを前提に大きなリスクを背負ったのに彼の方は約束したことを実行していないからです。」という文章を読んだところで、原書を読もうと決心しました。高い授業料となりましたが、原書そのものを知る良いきっかけにはなりました。