物静かな外見とはうらはらに堅い野心に支えられた強い精神力をもつジュリアンはナポレオン失脚後も熱烈に彼を崇拝する夢見るヒーローでもありました。他人を信用しないため台詞の多くが独白です。
不遇の少年時代から努力と忍耐により着実に地位と名誉を手に入れていくジュリアンは周りにとっては冷たい人間にしか映らなかったと思われますが、優しいもろい面も持ち合わせているところが読者にとっては大変な魅力となっているのではないかと思います。
侯爵の娘マルグリッドと、天使のような心を持ったレナール夫人、ジュリアンを愛する二人の対照的な女性も話の展開に重要な存在です。