私の中では、人生のベスト１０に確実に入る小説です。
恋が始まり、そして終わっていく中の、理屈じゃどうにもならない繊細でエゴイスティックな感情を、
的確になぞっていく心理描写はほとんど残酷なくらいです。そして文章の美しさは絶品。
ロマンティックでアンニュイなだけじゃ、決してない。もっと骨太で、
生きていくことの孤独感やそれを引き受ける覚悟、のようなものを考えさせられました。
サガンって女性が主に愛好する作家だと思いますが、ぜひ男性にも読んでもらいたいです。
こんな素晴らしい小説がなんで絶版なんだ。新潮文庫さん復刻版望む！

読んでいて、リシュールの空虚さについて行けない人もいるかもしれない。けれど、ときには自分を強引に引っ張っていく情熱が、「自分が思い描く幸せ」に結局は負けてしまう展開は印象的。誰かを知るということ、大切に思うということを考えるとき、この本の色々なフレーズは忘れられないものとなる。