ブランド好きを社会論まで昇華する。
★★★★★
エルメスの職人が独立して、エルメスと同じ材質、デザインのバックを10分の1の価格で売っていたとして、そのバックを買うかどうか。
もし、買わない選択をしたとしたら、そこにブランドの条件があるのではないか、著者のブランド好きから始まる的確なブランド論。
ラグジュアリーブランドであるヴィトン、エルメス、シャネルを基に分析を加え、結論的に、大衆の出現とブランドの誕生の関係を解き明かすブランド論。
要するに歴史と伝統を持つ貴族にブランドはなく(まさに貴族こそがブランドでしょうか)、歴史と伝統のない大衆は、歴史と伝統を持つブランドにあこがれるということでしょうか。
読み終わって、一見無駄かなと思えるブランドに対して、反対に重要性を感じることが出来るようになりました。
ブランド論入門としても最適な本だと思います。
また、巻末には、さらにブランドを学びたい人のための参考文献もついていて非常に良心的です。
ブランド好きフランス文学者の本
★☆☆☆☆
「ブランド」論考のようでありながら、通俗的で凡庸きわまりない本。
たとえば、ルイ・ヴィトンについて
1,ルイ・ヴィトンはルイ・ヴィトンだから価値がある。
2.ルイ・ヴィトンは顧客が皇室だから価値がある。
こうした「循環論法」から正解は2,だと言う。馬鹿げている(笑)
循環論法を並べたところで正解はない。
ブランド以外の庶民のファッションに興味のない、この俗物文学者にとって、
ブランドのチカラの源泉を「分析」する姿勢をとりながら、本人はすでにそのブランドにどっぷり浸かっているのである。ともかく他の著書もそうだが、ブランド好きである。
で、批評性を持ち得るのか? 鋭い批判をもちえるのか? もちろんできてない。
タイトルの『ブランドの条件』とは、じつはこの本の本質から言えば『ブランド好きの条件』とすべきである。
ところで、著者はアナール派のアラン・コルバンの本の翻訳をいくつかやっているのだが、そこでのファッションにおける階級の問題が本書で、また他の同著者の本でまったく反映されていないのは、どういうことか? 庶民への眼差しの欠けたブランド好き大学教授の「特権性」について、アラン・コルバンに分析してもらいたいものだ。
ラグジュアリー・ブランドの知識
★★★★☆
「ブランドの条件」と大きいタイトルですが、中身は、ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルの3つの、ラグジュアリー・ブランドに絞っています。
それ故、この3つのブランドの価値創造の経緯については結構なところまで考察できますが、現在あふれているブランド全てに当てはまるかと言われればそうでもないかもしれません。
もうちょっと一般的なブランド論について学びたいなら、別な書籍をオススメしますが、自分はこの3社がいかなる歴史でブランドとなったか、ついでに女性がどうしてブランドにハマるか、等、知らないことを色々学べたので、よかったです、この本。
帝国的快楽
★★★★☆
フランスのラグジュアリーブランドについて描かれており、いわゆるマーケティング的スタンスから書かれたブランド本とは趣が違うが読んでいて面白かった。("書かれた"というより、どちらかというと"描かれた"、という印象)。
そのためブランドについての普遍的根拠を明らかにしている、というよりフランスというローカルな場所が何を産業として成功させているか、という読み方の方がすっきりするかもしれない。
この本の最後の方に「ラグジュアリーは帝国主義を内にかかえこんでいる」という下りがあるが、ここにこの本の内容が集約されているように感じる。フランスという国の、植民地支配を含む歴史的存在がここで紹介されているブランドの背景にあるものなのだ。
なぜこうしたブランドを所有したいか。理由は、そこに帝国主義の快楽の存在をかすかに感じるからなのかもしれない。
ブランドの力
★★★★☆
同じ素材、同じ手順で作られていても、それが「ブランド」ものであれば、商品の価格はグンと上がる。それが一体何に由来するものなのかを解明するために、本書ではルイヴィトン、エルメス、シャネルを取り上げて考察している。
日本人女性の44%、日本の2〜3千万人の人がルイヴィトンの商品を所有していると言われているらしいが、その数値を聞いても別に驚かないぐらい、街中でルイヴィトンを持った人を見かける。あれだけ多くの人が持っていて「ブランド」自体の価値が下がらないのだろうかと不思議に思っていたが、それは全てルイヴィトンの戦略によって上手く調整されているらしい。
本書で取り上げられている三つのブランド、すなわちルイヴィトン・エルメス・シャネルの内、シャネルの取った戦略は他の二つが取った戦略とは全く違ったものだったようで、読んでいてかなり面白かった。
ただそれは、どちらが正しいということでもなく、どのブランドも個性があって、考え方がカッコいい感じた。
新書という制限もあって、三つのブランドからしか議論を組み立てられていないところが少し残念な気もするが、この三つのブランドに関しては、なぜ価値があるのかについて知ることができるし、それをその他大勢のブランドに当てはまることも可能だと思う。
なぜブランド商品は高いのか。それを知りたい人は是非どうぞ。